東シナ海上の寒気吹き出し雲の雲頂エントレインメント不安定に関する成層について (事例解析)
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概要
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東シナ海域の名瀬における寒気吹き出し時の混合層上端付近の成層について、1991年1月11日〜2月3日のルーチン高層気象データ等を用いて、日本海風下の輪島と比較しながら調べた。その期間の中で、混合層上端付近にCloud to Entrainment Instability (以下、CTEIと略す)の条件を満たす成層が名瀬で顕著に現れれた1月12〜13日の例について、名古屋大学で受信した気象衛星NOAAのAVHRR赤外データも用いて、名瀬の風上域から風下域への下層雲群と成層の変化を記述した。更に、寒気が済州島付近から名瀬ヘ至る間にどの様にしてCTEIの条件を満たす成層が形成されるのか、大気中の熱・水蒸気収支各項の鉛直分布を解析することにより議論した。その結果、次の点が明らかになった。(1)日本海風下域の輪島と対照的に、東シナ海域で大陸から約1000km風下にあたる名瀬では、CTEIの条件を満たす成層が、寒気吹き出しのほとんどのイベントで観測された。(2)1月12〜13日の事例によれば、名瀬の風下側でCTEIの解放が実際に起こり、寒気吹き出し時の下層雲群の特徴もその影響を受けた可能性が示唆された。(3)この事例では、済州島から名瀬にかけてCTEIの条件を満たす成層が形成されるとともに、個々の下層雲域が比較的大きな水平スケールと平坦な雲頂を持つものへと変化し、CTEIの顕在化に好都合な雲層が形成された点は興味深い。(4)名瀬の風上側でのCTEIの条件を満たす成層の形成に対しては、非断熱加熱率+加湿率(total apparent source)が混合層上部でも大変大きく、かつ、それが上方で急激に減少することが大きく寄与していた。東シナ海域では日本海と違って、混合層より上方の未飽和度(飽和比湿-比湿)が大変大きいことも、海面からの多量の「熱+水蒸気」補給に加えて、寒気吹き出し時でもCTEIの条件を満たす成層が形成されるための重要な要因の1つと推測される。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1996-10-25
著者
-
武田 喬男
名古屋大学大気水圏科学研究所
-
加藤 内蔵進
岡山大学教育学部理科教室
-
越田 智喜
名古屋大学大気水圏科学研究所:新日本気象海洋株式会社環境情報研究所
-
武田 喬男
名古屋大学
-
加藤 内蔵進
名古屋大学大気水圏科学研究所
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