RAPDマーカーを用いた九州地方のスギさし木品種の分類
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概要
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九州地方のスギ(Cryptomeria japonica D.Don)さし木品種を対象に,RAPDマーカーを利用して決定されるDNA型(DNAtype)に基づいた分類・同定を行った.本研究の目的は,1)遺伝情報の本体であるゲノムを直接分析することによる正確な品種の分類法を確立し,2)各品種内の構成クローン数を明らかにすると共に,3)得られた遺伝情報を基に各々のさし木品種を代表する基本遺伝子型個体(或いは個体群)を指定することである.実験に用いたさし木品種は九州4県(福岡,大分,宮崎,鹿児島)の公立の試験研究機関に育種母材料として集殖されている84品種で,総供試個体数は549個体である,RAPDプライマーのスクリーニングの結果,4種類のプライマーから増幅効率が良くかつ再現性が高い7本の増幅産物(特定バンド)が確認された.これらの特定バンドを用いて分類した結果,全供試個体は36のDNA型に分類された.さらに,同一さし水品種で同じDNA型に含まれた個体群に対して,6種類のプライマーを用いたDNAフィンガープリント法によってクローン同定を行った.その結果,今回供試した84さし木品種のうち,53品種がモノクローン品種であり,31品種が複合クローン品種であった.また,モノクローン品種の53品種と一部の複合クローン品種について基本遺伝子型個体の指定を拭みた.Random amplified polymorphic DNA (RAPD) markers were used to discriminate cutting cultivars of Japanese cedar (Cryptomeria japonica D. Don) in Kyushu. 549 individuals from 84 cutting cultivars, collected as breeding stock by four prefectural forestry institutes (Fukuoka, Oita, Miyazaki and Kagosima prefectures), were investigated, Based on the data of seven high-reproductive specific bands amplified with four arbitrary 10-mer primers, these individuals were subdivided into 36 DNA types. Using another six primers, DNA fingerprint analyses were carried out for individuals of the same DNA type, It indicated that 31 cutting cultivars consisted of several genotypes. On the other hand, for 53 cutting cultivars, there was no difference within each cultivar in DNA fingerprint. This result suggests the high probability that these cultivars were monoclone. It was concluded that RAPD markers are useful for cultivar-discrimination and clonal identification of Japanese cedar.
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