卵巣の肉眼的所見および受胎状況からみた雌ニホンカモシカの繁殖状況

概要

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1979年から1983年の間の冬期に,岐阜県下で捕殺された雌ニホソカモシカ355頭の両側卵巣について肉眼的観察を行い,さらに妊娠状況を参考にして,この動物の繁殖活動に関する推定を行った。結果は以下の通りである。1)卵巣の重量および大きさは,非妊娠個体では年齢と共に増加し,左右間に有意の差は認められなかった。2)卵巣割面に見られた構造物として,卵胞,黄体の他に硝子体および黄色小体が区別された。3)12月から3月の間における最大卵胞の直径は,平均4.6mmで小さいものが多く,暦月による変動がみられなかった。また発情黄体のほとんどは12月捕獲個体に見られたことから,発情および排卵は大多数の個体において,12月以前に終了するものと思われた。4)妊娠黄体は妊娠中期以降に急速に退縮過程に入り,その大きさを減じた。5)硝子体は発情黄体,黄色小体は妊娠黄体が退縮したものであると推定された。6)黄体または硝子体の存在を排卵の指標にすると,1.5歳の個体の約10%が排卵し,その%が妊娠していた。これに対して2.5歳では約30%が排卵し,その大多数が妊娠していた。これらのことから,雌カモシカの性成熟年齢を2.5歳とする従来の報告が妥当であると思われた。7)成カモシカの妊娠率は62.2%であり,1雌あたり平均して3年間に2子を出産していると推定された。
岐阜大学の論文
1983-12-15

卵巣の肉眼的所見および受胎状況からみた雌ニホンカモシカの繁殖状況

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