雄ニホンカモシカの包皮腺の形態学的観察 : 血中テストステロン値の変動との関連について

概要

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1984年12月〜1985年3月,および1986年3月に岐阜県下で捕殺された雄ニホンカモシカのうち98頭について,包皮腺と皮膚の形態学的観察,および計量組織学的観察(包皮腺面積,腺胞数,分泌核数)を行った。この中30頭の個体については,血清テストステロン値の変動と包皮腺の形態学的変化との関係を検討した。また本研究中に包皮開口部に近い包皮外側表皮直下に偶然発見された包皮腺様構造物についても観察を行った。包皮腺は皮膚の脂腺に比べて著しく大型のEosin好性の脂腺で,よく発達した小葉構造を具えていた。包皮腺様構造物は,腺胞の組織学的所見が皮膚の脂腺のそれと類似していた。包皮腺面積,腺胞数は性成熟に伴って増加し,その後一定範囲内を上下しつつ,ほぼプラトーの状態を保つ。しかし分泌核数においては加齢に伴う大きな変化は見られなかった。暦月の推移に伴う変化では,12月から3月にかけて包皮腺面積,分泌核数は減少したが,腺胞数は逆に増加した。皮膚の脂腺および包皮腺様構造物における加齢,暦月の推移に伴う変化は見出せなかった。血清テストステロンと包皮腺との関係については,包皮腺面積との間に正の弱い相関が見られたが,腺胞数,分泌核数との間にはいかなる相関も見出せなかった。以上の所見から,包皮腺が10月から11月にかけて交尾の最盛期をもつニホンカモシカの繁殖に,何等かの役割を果たすものと推察されるが,包皮腺に対する内分泌支配,および包皮腺の具体的な役割については,明らかな結論に達する迄には至らなかった。
岐阜大学の論文
1987-12-25

雄ニホンカモシカの包皮腺の形態学的観察 : 血中テストステロン値の変動との関連について

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