ニホンカモシカの膣,膣前庭および外陰部の形態学的研究

概要

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ニホンカモシカ雌性生殖器の形態学的研究の一環として,昭和56年から58年の冬期(12月〜3月)にかけて岐阜県下で捕殺された73例の雌ニホンカモシカを用い,膣,膣前庭および外陰部の一般構造と特性を明らかにした。1)膣では,腹側粘膜固有層に一対の卵巣上体縦管が腺様構造をなし残存していた。また膣上皮には,粘液細胞がしばしば確認された。この細胞は,核が濃縮し不定形で,細胞質に多量の粘液を含む円柱型の杯細胞様の粘液分泌細胞であった。この粘液細胞の出現頻度は,成獣非妊娠例の大卵胞群と黄体を有する個体群で増加していた。2)膣前庭には,前庭腺を欠いていた。また外尿道口付近の粘膜固有層には,分岐管状の粘液腺である尿道旁腺が存在していた。3)外陰部では,非角化性の陰核包皮が存在していた。この表皮は,多量の脂肪滴を含み,表層より剥離し全分泌の様相を呈していた。また一例ではあるが,陰核に硝子軟骨が存在していた。4)本研究の最も注目すべき点として,陰核包皮腺の存在が挙げられた。本腺は,他の反芻類家畜に記載のみられないもので,陰核包皮後位の剛毛に付随してみられる大型のHepatoid様脂腺であった。腺胞を構成するSpongiocyteの数および腺胞の嚢胞化現象は,成獣非妊娠例の大卵胞群で有意に増加していた。これらの結果から,ニホンカモシカ陰核包皮腺の卵巣ホルモンによる影響と,Sexual behaviorにおける放香腺としての役割の可能性を考察した。
1984-12-15

ニホンカモシカの膣,膣前庭および外陰部の形態学的研究

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