ニューラルネットワークの経営学研究への適用可能性II (故鈴木清之輔教授追悼号)
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概要
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過去50年以上にわたって,人工知能研究は人間の推論機構を自動化するというテーマにおいて大いなる進歩を遂げてきた。これに加えて人間の脳の情報処理プロセスを模倣するような構造と処理能力を持つコンピュータを作る,という研究も進んできた。具体的には大規模な並列処理,大量情報検索,経験に基づくパターン認識などをも含む知識表現法であり,これらを実現するテクノロジーはニューラルネットワーク(artificial neural networks, ANNs)と呼ばれている。ANNsはエキスパートシステム(expert systems, ES)の論理的・分析的方法では不可能であった人間の問題解決能力を実現させる可能性を持っている。たとえばESではできなかった,ルールが不明確ながら一定パターンの生ずるような大量データ処理があげられる。また,不完全データやノイズの入ったデータからの推論があげられる。筆者らは経営学研究に人工知能の手法を応用し,仮説検証,実証研究などによって得られた知識ないし理論を蓄積し,多量の専門的知識を瞬時にそして適時に引き出すモデルの研究を行なってきた。正確な知識が得られ,表現でき,どのような場面にどのような知識を用いるべきか,がはっきりしているケースにおいてESは強力な武器となるが,知識の表現が困難であり,また情報が体系的でなく,不正確であるケースにおいてはANNsが大いに有用であると考えられる。本研究では,ANNsについて概観し,学習され構築される処理プロセスを如何に客観的に扱い,解釈するか,という問題を検討している。その際,"ルールが不明確でデータは不完全ながら一定パターンの生ずるような大量データ処理"の例として,財務データを用いた倒産予測モデルを取り上げる。従来の研究では,単に線形多変量解析モデルの代わりにANNsモデルを用いることにより高い判別力を示したものが多く,構築された処理プロセスは解釈されず,ブラックボックスになってしまっていた。これは決してそれらの研究者の責任ではなく,ANNs自体の問題点であった。本研究では経営学研究という特定の環境においてそれらの問題が解決可能であることを示し,ANNsモデルがどのように適用可能であるかを検討する。
- 慶應義塾大学の論文
- 2000-11-25
著者
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