顎裂部骨架橋形成後に著明な骨吸収を認めた一例 : 口唇頬粘膜弁の影響について

概要

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顎裂への二次的新鮮自家腸骨海綿骨細片移植(以下;骨移植)後の骨架橋形成の良否は, 裂型, 顎裂幅, 施術時年齢にかかわっていると報告されている。しかし, 我々は骨移植後, 経過観察中に形成された骨架橋が徐々に吸収し狭小化した興味深い症例を経験した。骨吸収に関するこの現象は裂型, 顎裂幅, 手術時年齢以外の別の原因によると考えている。本症例は, 骨移植前に顎裂の鼻口腔瘻が口唇頬粘膜で閉鎖されていたため, 同口唇頬粘膜弁を用いて骨移植術を施行した。高度な骨誘導能を有する骨髄海綿骨細片を用いて骨移植を行い, 形成された骨架橋は術後1年目から徐々に吸収し始めた。我々は, この骨吸収が次に挙げることが原因ではないかと推察した。1.形成された骨架橋は, 骨膜や付着歯肉のない口唇頬粘膜によって吸収された。2.口唇の動きが継続的に粘膜弁に伝わり, その刺激が骨吸収を徐々に進行させた。以上のことにより初回口唇形成手術時には顎裂部を口唇頬粘膜弁で閉鎖する術式を避け, 二次的骨移植時には, 付着歯肉を含む粘膜骨膜弁を用いて移植骨を被覆することを提唱したい。
東北大学の論文