IV-(2) 沖縄本島・久米島におけるマングローブの分布状況(マングローブに関する研究)(林学科)
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概要
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[figure]本島のマングローブは全てが人為的影響を大きく受けているがその分布状況を相観的にみて2つの型が認められる。一つは流路に沿って細長く分布するもので帯状型マングローブと称し, 他の一つは中洲, 小流路などを含み幅広く分布するもので群状型マングローブと称する。図-9にマングローブ分布地の平面, 縦断面, 横断面模式図を示した。図-9(ハ)でe, f, g, h, iに分布するのが群状型マングローブで, 地形的にf, hにしか分布していないものと, 以前, e, iにも分布していたものが自然, 人為的にf, hにしか残存しないようになったものが帯状型マングローブである。マングローブは海水または汽水の流入する地域に成立する特殊な群落であり, この群落は成立地の陸地化にともない容易に他の群落に移行する。またマングローブ地帯が一度自然堤防, 人為的堤防によって陸地化され, 他の群落, 耕地となっても再び堤防内へ海水または汽水が流入すると再びマングローブへ移行する例もみられる。従ってマングローブ群落の存続にはその成立地を最高潮位以下に保つことができれば他の群落の侵出はおさえられる。本島には前述したように4樹種が分布するがこの全樹種がみられるのは金武のみである。他の分布地はメヒルギ, オヒルギのみの所が多いが, 各樹種のすみわけを考えて図-9(イ)に示した。即ち, 本島では海岸より内陸に向ってヤエヤマヒルギ, ヒルギモドキ, (ヒルギダマシ)-メヒルギ, オヒルギの順となっているがはっきりしたものではない。安里は本島中央部東海岸での調査でヤエヤマヒルギ, ヒルギダマシの分布地を多く報告しているが現在は減少, 消失している。両樹種は群落の海岸側前面部に生育するが, この減少・消失の原因は両樹種ともその分布の北限で生殖器官が豊富でないことと, 生育適地の消失とが考えられる。生育適地の消失は直接の人為的破壊と土砂の生産増加にともなう側方, 後方からの陸地化という間接的なものによる。マングローブ群落は土砂堆積による干潟泥地の形成にともない海側へ侵出してゆくが, 図-9(ロ)のa域に土砂が堆積して群落前面構成種の生育条件がととのう前にb域に土砂が堆積して前面構成種の生育適地が消失した場合, 図-9(イ)のヤエヤマヒルギ・ヒルギモドキ・(ヒルギダマシ)帯が海へ追い落されたかたちとなり, この帯の樹種が消失してしまうものと考えられる。また, 佐藤が報告しているマングローブの土砂堆積促進機能のため, 群落の前面侵出速度よりも群落内堆積速度が大きいことも生育適地消失の原因となっている。本島のマングローブ群落のうち慶佐次は国の天然記念物に, 大浦は名護市の天然記念物に指定され保護されている。この他の分布地ではヒルギモドキ北限地の金武村億首川河口, メヒルギ群落の宜野座村潟原・慶武原川下流・河口, 漢那川下流・河口の3か所は保護しなければならない。また, 久米島儀間の群落は洪水時の障害となるので伐倒されているが久米島で唯一の分布地であるので保護されることを望む。現在, 天然記念物として指定されている分布地も保護管理が不充分であり, 指定されていない分布地は潟原の例をあげるまでもなく破壊され消失しつつある。今後のマングローブ群落保護の基本的な考え方は現在の分布地を人為的に破壊しないことは言うまでもないが, 群落前面の侵出空間を確保することと, 流域での土砂生産をおさえることである。自然保護とはある空間内に存在する土地, 生物(人間を除く)をそのままにしておくこともその一部ではあるが, その空間内で人間生活と調和させ共存してゆくことが基本的な考え方であろう。海に囲まれ, 土地が狭く, 自然条件の厳しい沖縄では種々の要因を充分考慮し, 総合的な視野にたった保護行政が重要である。
- 琉球大学の論文
- 1976-12-01
著者
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