リユウキユウマツの生長に関する研究 (I) : リュウキュウマツ播種造林地に於ける除伐試験(林学科)
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概要
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辻本^<4)>のリュウキュウマツ林分平均材積収穫予想表によると, 林令10年で平均胸高直径は6.4cm, 平均樹高6.0m, 本数5,000本/haとなっている。本試験地の林分は林令11年生であるが, これらの値に比して平均胸高直径は小さく, 平均樹高はほぼ同じで, 本数は2∿3倍と過密状態にある。また, 佐藤^<2)>の区分によると本林分は1等地にあたる。この林分で除伐を実施した結果, 除伐は残存木の枯死率をたかめる作用をなしたが, 自然放置区においても高い枯死率を示したことからみて, これは過密による共倒れの影響が大きいものと考えられる。従って, 過密状態となったリュウキュウマツ林分では除伐して生立木本数を少なくしても共倒れは防止できず, また, 除伐によっても共倒れ型個体構造は変化しないことから, 過密状態になる前に除伐をおこなって健全なる樹冠の生長をさせなければ成林しがたいことを示している。播種後, 自然競争させた場合, ウッ閉する段階で優勢であった個体は良好なる生長を持続し, このような個体数が多い場合, 残存率は大きくなるが, 上層木がFig.2. に示したような共倒れ型構造をなしている過密林分では残存率は極めて小さくなる。いわゆる, 自然間引をさせた場合, 本試験地の例からみて, 個体間の過度なる競争から生長差が生じないで共倒れ型林分となることがあること, 個体間に優劣の差が生じた時も優勢木の個体数が少ないこと, その個体配置が適正でないことから, 個体間の競争がはげしくなる前に除伐をおこない生立木本数および個体配置を適正にすることが大切である。リュウキュウマツの播種造林は巣播きのため, 巣内および巣間の競争があるので, 立地条件の良好なる場所では播種後5年目頃を目安として, 巣内の個体競争をやわらげるために, 第1回目の除伐を1播種穴1本立てとして実施し, 生長の大きい播種後5∿10年間に巣間の個体競争を考慮して第2回目の除伐を実施することが考えられる。リュウキュウマツの造林面積は大きいが, 不成績造林地もまた多いと言われる。これは造林不適なる場所へ造林を拡大したこともあるが, 保育が適切に実施されていないことにも大きな原因がある。その中で自然間引による生立木の本数調整のみに依存していた従来の施業に対する考え方に問題があったと言わなければならない。リュウキュウマツは典型的な陽樹で枝があばれ易いという樹種特性がある。巣播き造林はこの性質をおさえるとともに, 下刈費の節減にもなり, 有効なる造林法であるが, 一方では本林分のような共倒れ型林分をつくる原因ともなっている。従って, リュウキュウマツ林の施業においては人工的な競争調整である保育作業が特に重要であると考えられる。
- 1979-12-11
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