マングローブ林の林分解析(林学科)
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概要
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マングローブ林は熱帯および亜熱帯の海岸および河口の泥土上に生育する特殊な群落である。本群落は日本では九州本島南端の鹿児島県を北限とし, 南下するにつれて発達し, 南限の西表島で最も発達した群落を形成している。本論文ではこれまでほとんど明らかにされていなかった日本各地の大小のマングローブ分布地の確認, 分布状況の調査をおこない, 更に方形区調査も合せておこなった。即ち, 九州本島, 種子島, 屋久島, 奄美大島, 沖縄本島, 久米島, 宮古島, 伊良部島, 石垣島, 小浜島および西表島の各島において生育地を確認し, 各生育地では生育樹種およびその生育状況(胸高および根元直径, 樹高, 生殖器官の有無)および生育面積について調査した。次に種子島, 屋久島, 奄美大島, 沖縄本島, 石垣島および西表島の各生育地に合計73箇の調査区を設定し, マングローブ林の林分構造を明らかにした。また, これらの調査区において生立木の平面的個体分布の解析をおこない, 更にこの結果よりマングローブ林の成立および発達過程について考察をおこなった。現存量に関する調査は沖縄本島のメヒルギ林と石垣島のオヒルギ林およびヤエヤマヒルギ林において層別刈取法を使って現存量測定をおこない, これら林分の現存量および生産構造について解明した。以上のマングローブ林の分布状況と林分構造およびその成立, 発達過程, 現存量についての調査研究は総合的な観点からの解析, 考察より次のようにまとめられた。1.日本に分布するマングローブ構成種はメヒルギ, オヒルギ, ヤエヤマヒルギ, ヒルギダマシ, ヒルギモドキ, マヤプシギ, ニツパヤシの7種である。2.日本におけるマングローブ分布地は九州本島に3箇所, 種子島に4箇所, 屋久島に1箇所, 奄美大島に3箇所, 沖縄本島に34箇所, 久米島に1箇所, 宮古島に5箇所, 伊良部島に2箇所, 石垣島に30箇所, 小浜島に1箇所および西表島に24箇所, 合計108箇所である。なお, この他に南大東島に1箇所マングローブ分布地がある。3.日本のマングローブ生育北限地は鹿児島県川辺郡大浦町である。これは世界的にみても分布北限にあたる。各マングローブ種の自生北限はメヒルギが種子島西之表市湊, オヒルギが奄美大島住用村, ヤエヤマヒルギが沖縄本島東村, ヒルギモドキが沖縄本島金武村, ヒルギダマシが宮古島平良市島尻, マヤプシギが八重山群島の小浜島である。ニッパヤシが西表島の船浦である。4.日本における各マングローブ種の生育地を北から南へみてゆくと, 九州本島, 種子島および屋久島にはメヒルギのみ, 奄美大島にはメヒルギとオヒルギ, 沖縄本島にはメヒルギ, オヒルギ, ヤエヤマヒルギ, ヒルギモドキの4種, 宮古島にはメヒルギ, オヒルギ, ヤエヤマヒルギ, ヒルギダマシの4種, 石垣島にはメヒルギ, オヒルギ, ヤエヤマヒルギ, ヒルギダマシ, ヒルギモドキの5種, 西表島には上記5種にマヤプシギとニッパヤシを加えた7種が分布している。沖縄本島以北の生育地ではメヒルギが優占し石垣島と小浜島および西表島ではオヒルギが優占している。宮古島と伊良部島はその中間に位置し, 特に優占する種は認められない。従って, 日本のマングローブ林は九州本島, 種子島, 屋久島, 奄美大島, 沖縄本島および久米島がメヒルギ優占地域, 石垣島と小浜島, および西表島がオヒルギ優占地域という2つの地域に区分される。また, マングローブ林は林床に他の植生を有せず, 既に述べたマングローブ種のみから成りたっている。5.メヒルギおよびオヒルギはその生育個所から樹形の違いを加えて異なる型に区分された。メヒルギではメヒルギI型は海側前面および流路側林縁に生育するもので矮生で前縁型とした。メヒルギII型はメヒルギI型とメヒルギIII型との中間の生育個所を占め, 中間的樹形を示し中間型である。メヒルギIII型は最も内陸側に生育するもので樹高の高いもので内陸型である。オヒルギはマングローブ林において普通最も内陸側に生育することが認められたが, 海岸側前面に生育する矮生のものも生育している。前者は内陸型, 後者は前縁型と区分された。6.マングローブ林は上層を占める主要種から種々の林分型に区分される。メヒルギ優占地域のマングローブ林は1)メヒルギI型2)メヒルギII型3)メヒルギIII型4)メヒルギ・オヒルギ型5)メヒルギ・(オヒルギ)型6)オヒルギ・(メヒルギ)型7)オヒルギ型8)ヤエヤマヒルギ型の8林分型に区分された。また, 同様にオヒルギ優占地域のマングローブ林は1)オヒルギ型2)ヤエヤマヒルギ型3)ヤエヤマヒルギ・オヒルギ型4)メヒルギ型5)マヤプシギ型6)ヒルギダマシ型の6林分型に区分された。7マングローブ林において構成種のすみわけが海岸または流路から内陸へ向って認められた。メヒルギ優占地域ではヤエヤマヒルギ・ヒルギモドキ⟶メヒルギ・オヒルギの順である。前述のメヒルギ区分ではメヒルギはメヒルギI型⟶メヒルギII型⟶メヒ
- 1979-12-11
著者
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