ギンゴウカン群落に関する研究 (I) : ギンゴウカン林の林分構造(林学科)
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概要
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沖縄本島南部のギンゴウカン林に調査区を設定し, 方形区法により林分調査をおこない, また, 層別刈取法を用いて現存量を測定した。林分密度は2.81∿13.25で密生した林分を形成し, 樹高と胸高直径の最大値は各々6.1m, 6.5cmと小高木となることを示している。胸高断面積合計の最大値が調査区の0.179%と小さい値を示しているのは胸高直径の分布幅がせまいこと, その階別本数分布が4cm以下にモードがあることからうなずける。林分樹冠面積は調査区の2.9∿3.6倍で, 上層木のみについてみても1.6∿1.8倍と上層木で完全にウッ閉している。本樹種は先駆的樹種の陽樹であり, 上層木で完全にウッ閉しているのに下層木が多く生立し, 樹高階の分布幅が広いのは本樹種が複葉であること, 葉量が少ないことによるものと考えられる。また, 樹高階別本数分布の山型分布の頂点が径別本数分布のそれより右偏りになる傾向がみられるが, これは本樹種が陽樹であるため, 伸長生長が肥大生長よりまさり, 早くから林冠層へ達するためで, このことが階層構造を不明瞭にしているものと考えられる。平面的個体分布は上層木が小集団からなる集中分布, 下層木が一様分布とランダム分布, 全木がランダム分布様式をなしている。現時点でこれらの分布様式について明解なる説明をなし得ないが, 本樹種の種子散布が自然落下によるものとすれば, 上層木は初期に侵入した個体群であり, この集団を中心として次第に分布域を広げていったものと考えられる。また, 林分形成後, 生産された種子は林床に落下し, 大多数の種子は林冠が何らかの原因で破れるまで発芽できず, 林冠破壊後, 萠芽および発芽が一斉におきて, 再び林分を形成してゆくものと考えられる。この林分形成の過程にともない平面的個体分布の様式は異なるものと考えられるが, 詳細は今後の調査研究で明らかにしたい。現存量は全地上部重が最大53ton/ha, 生殖器官が喜屋武区で5.4ton/ha, 与儀区で2.4ton/haと多く生産され, 本樹種の繁殖力の強いことを証明している。また, 葉量が全地上部重の3.3∿4.2%とその比率が小さく, また, その配分比が各個体でほぼ一定となっている。葉量が小さいのに, 港川区を例とすると林床での相対照度は9.8%であり, 従って, 吸光係数は大きく, 2.11/LWIとなっている。
- 琉球大学の論文
- 1979-12-11
著者
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