カマンベールチーズの熟成中における軟化と塩類の動態
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概要
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本研究は、カマンベールチーズの熟成における軟化の主因と考えられているチーズ内でのpHや塩類の動態を追跡したものである。熟成開始前のグリーンチーズに比べて熟成が完了した4週目のチーズ中心部では、pHは4.5から7.8に上昇、乳酸は1.0% から0.1% で約1/10に低下、アンモニアは100g当たり0.04gから0.063gで約1.5倍に上昇、カルシウムは100g当たり0.3gから0.04gで約1/10のに減少、リンは100g当たり0.25gから0.12gで約1/2に減少した。これらの変化が本チーズの熟成軟化の要件と推察される。培養試験から、本チーズに使用したかびスターター Pen. candidumに乳酸の代謝能とアンモニアの生成能を有すること、その結果pHが上昇することが確認された。しかし、未成熟のグリーンチーズをアンモニア蒸気にさらした場合も、乳酸を含まないチーズを熟成させた場合も正常な軟化は生じなかった。最も顕著な変化は、pH、乳酸、カルシウムに認められたが、これらのチーズ内での動態が主導的な役割を果たすものと推察された。Experimental Camembert cheese softened from the surface to the center portion after 3-4 weeks of ripening.As ripening progressed,pH value rose from 4.5 to 7.8,lactic acid content decreased from 1.0% to 0.1%,ammonia content increased from 0.04g to 0.063g/100g,calcium content decreased from 0.3g to 0.048g/100g and phosphorus content decreased from 0.25g to 0.12g/100g in the center portion of cheese. The changes in these values were considered as criteria leading to softening of mold surface-ripened cheeses.Mold starter Penicillium candidum AM used the cheese manufacture possesses the abilities lactic acid,producing ammonia and lowering pH when supplemented with lactic acid and peptone Czapek Dox solution.However,normal softening was not observed by incubation of green cheese under ammonia atomsphere conditions.Also,lactic acid free cheese did not soften in spite of mold growth.It is proposed that the primary factor of softening in mold surface-ripened cheese is a rise of casein solubility caused by lowering of calcium crosslinking due to a decrease of calcium level in the cheese texture.The results suggested that the lactic acid metabolism and pH rise play a main part in inducement,and that insolble calcium phosphate accumulates in the cheese surface.
- 1999-02-01
著者
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