牛乳および乳製品の無機塩類に関する研究 : IX. 異常乳,特に乳房炎牛乳とアルコール不安定乳の無機質
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概要
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牛乳の無機質に関する一連の研究の一部として,本報では,異常乳について研究した.すなわち,乳房炎牛乳8,アルコール不安定乳5,生理的高酸度乳1,および低泌乳牛乳2,計16試料について,灰分,K, Na, Ca,Mg, P, Fe, Cu, Mo, Zn, S,およびClの12元素,ならびにP/Caと塩素•乳糖価を測定した.はじめに,常乳の各種無機質含量の範囲とその傾向(第1図)を示し,対照を明瞭にした.これに比べて,乳房炎牛乳はNaとCl,それに伴つて灰分量が多く,CaとPとKが僅かに少なかつた.しかし,個々の試料をみると,すべての乳房炎牛乳が高Na量ではなかつた.その場合,Na量の増加が著しくないときはKが多く,NaとKの合量は,必ず,常乳より10〜20%多くなつていた.また,乳房炎牛乳は,Mo量が常乳より極めて少なく,Feが多いこどを発見した.この乳房炎と,アシトーシス,ケトージス,あるいはそれらの既往症が,アルコール不安定乳生成の原因と考えられている.著者らは,これらの障害のない牛の乳で,しかもアルコールテスト陽性乳を5検体採取した.それらの無機質組成(第3表)は,乳房炎牛乳やアシドーシス牛乳と異なつていた.そこで,従来その原因に挙げられていた諸種の病乳とは異なる,別の型のアルコール不安定乳が存在すると推察した.このほか,泌乳の時から異常に酸度の高い乳や,泌乳量が異常に少ない牛の乳についても,無機質組成を調べた(第3表).
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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