ワイン中のフェネチルアルコールとγ-ブチロラクトンの含有量ならびに生成条件
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概要
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1. ガスクロマト法により市販ワインおよび試醸ワイン中のフェネチルアルコール(2-phenylethyl alcohol)ならびにγ-ブチロラクトンを分析した.さらに,これらの揮発成分の生成とワインの品質に対するアルコール発酵条件について検討した. 2. ワインに内部標準物質を加えて溶媒(酢酸エチル:n-ペンタン)抽出し,得られた溶媒層の一定量を直接ガスクロマトグラフ(FID付)に注入した.カラム条件は(1) PEG-20M, 5%, 145°Cおよび(2) PEG-4000, 10%, 135°C(カラムはともにステンレス製, 2m×3mm i.d.)で行った. 3. 市販テーブルワイン(国産,外国産)268点,発泡酒(国産,外国産)14点およびシェリー酒(スペイン産)11点を分析した:フェネチルアルコールの含有量はそれぞれ10〜89mg/l, 16〜57mg/lおよび31〜46mg/lであり, γ-ブチロラクトンはそれぞれ0〜27mg/l, 0〜13mg/lおよび0.17mg/lであった.揮発成分の含有量は産地国やワインのタイプ(白,赤ワイン;fino, oloroso sherry)によって異なっていた. 4. 発酵条件として酵母株,補糖,窒素化合物,亜硫酸,果醪の清澄化,好気および発酵温度の7条件について,甲州種ブドウの果汁ないし果醪を用いて試験した. (1) フェネチルアルコールの生成:ワイン酵母10株の生成量は0〜74mg/lであり,酵母の生成能に大きな差が認められた.補糖,アミノ酸(カザミノ酸, L-フェニルアラニン)添加,亜硫酸使用,好気的発酵および高温側(20°C以上)の条件は生成を促進した.一方,硫安添加,果醪の清澄化および低温側(20°以下)の条件は生成を抑制した. (2) γ-ブチロラクトンの生成:発酵試験での生成量は0〜13mg/lで微量であった.補糖条件は比較的生成を促進したが,その他の条件について明確な影響はみられなかった. 5. ワインの香味に対するこれらの揮発成分の関与を閾値,〓酒評価および等級別高級ワインの分析値から検討した,揮発成分のodor valueは0.44以下であり,また,ワインの品質との相関は示されなかった.これらの揮発成分は,ワインの番気や品質に直接的に関係するものではなく,それぞれ基本的香気成分として,ワインの香味に寄与していると考えられる.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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