ワインの熟成中におけ主要有機酸のエチルエステルの生成と熟成の指標
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概要
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(1) ワインの熟成中における主要有機酸(酢酸,乳酸,コハク酸,リンゴ酸,酒石酸)のエチルエステルの生成に対するエタノール濃度, pHおよび温度の影響について検討した. (2) エチルエステルの生成はエタノール濃度が高く, pHが低く(3.5以下),常温より高い温度(20〜30°C)の貯蔵で促進されることが認められた.それらの条件は,一塩基酸より二塩基酸のエステル生成に対する効果が大きかった. (3) 通常の温度(5〜30°C)におけるエチルエステル生成の活性化エネルギーとQ10はモデル溶液およびワインにおいて,それぞれ12.7〜17.6kcal/mol, 2.5〜3.0および3.8〜19.8kcal/nol, 1.2〜3.1であり,エステル化が一般の化学反応として進行することを確認した. (4) テーブルワイン中の一塩基酸のエチルエステルは,熟成1カ年でほぼ平衡値に達し,その後の変化は少ないが,二塩基酸のジエチルエステルは熟成するに従って著量(70〜140mg/l)に生成されることが明らかにされた.ワインの品質向上において,並酒では常温(20°C付近)で短期間の熟成にとどめることが,また,高級酒では低温(10〜15°C)で長期熟成させることが,品質に応じた適切な貯酒条件であることが認められた. (5) コハク酸ジエチル/コハク酸モノエチルの比と熟成期間(年)との相関を調べた,白ワインならびに赤ワインは,それぞれ20カ年および10カ年の期間の範囲で相関関係(相関係数γ=0.884, 0.868)が認められた.この比は熟成期間の指標に適用することができる.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
著者
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篠原 隆
キッコーマン(株)流山工場:(現)山梨大学工学部
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清水 純一
キッコーマン研究本部
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篠原 隆
キッコーマン株式会社中央研究所
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清水 純一
キッコーマン (株) 中央研究所
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清水 純一
キッコーマン株式会社中央研究所
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