クリのクリタマバチ抵抗性に関する研究 (第10報) : 芽組織のかつ変形成とポリフェノール性物質の組織内分布
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概要
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1. クリの芽にはクリタマバチの産卵, ゴール形成によつて種々のかつ変え死組織が形成された. 宿主の抵抗性反応と判断されるかつ変は維管束周在柔組織から始まる抵抗性反応III型である.2. 抵抗性反応III型のえ死は, 実験的に枝切断面より吸収させた酸性色素のゴール内への移行を阻害した.3. ポリフェノール性物質は抵抗性品種のゴール組織にはほとんどなく, 健全組織の維管束周在柔組織や髄に多く師管や導管には少なかつた. え死組織に隣接する細胞やゴールと健全組織の境界部ではこの含量が高かつた. 感受性品種のゴール組織にはポリフェノール性物質を多く含む細胞があつたが, 栄養細胞層にはポリフェノールの反応はなかつた. ゴールと健全組織の境界部でのポリフェノール含量の増加は観察されなかつた.カテコールタンニンの反応は, かつ変部やこれに隣接する細胞, および抵抗性反応III型のえ死が起ると予想される組織 (したがつて抵抗性品種のみ) に顕著であつた. 通常, ゴールやこの起源となる幼葉の葉肉組織はほとんどカテコールタンニンの反応を示さなかつた. したがつて, このタンニンは抵抗性反応の結果として生成されるポリフェノールと考えられる.4. かつ変え死組織の形成に先立ち, スダンブラックに染色される細胞群が観察された. 同様に Schiff 反応を示す細胞, リグニンの沈着を示す細胞も存在した.5. 抵抗性品種にクリ玉をつくるクリタマバチの系統とそうでない系統ではクリ玉またはゴールの重さや虫体の重さに差があつた. しかし, 両系統の幼虫の生存率は同じであつた. 宿主の品種や宿生者の系統に区別なく, 虫体にはFeCl3で検出されるポリフェノール性物質は存在しなかつた.
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