温州ミカンの着果負担に関する研究 : (第5報)着果樹と不着果樹の炭水化物経済について
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概要
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1. 前報で純生産量 (ΔPn), 総生産量 (ΔPg) などについて報告した3年生宮川早生の着果樹と不着果樹の, 各器官の炭水化物含有率 (乾物%) の季節変化を明らかにした.全糖の含有率は4月から7 (摘果期)〜9月まで減少したが, 6月に1時的に増加する器官もみられた. その後一定ないし増加したが, 1月以後再び減少した. 摘果後に葉内含有率は不着果樹が着果樹をたえず上回ったが, 非同化器官では着果樹が不着果樹を上回る時もあった. 着果樹の果実は収穫期に, 時期別にも器官別にも最高の含有率を示した.でん粉の含有率は各器官とも4月から7月まで減少し, 特に旧葉と地下部において著しかったが, 新しょうでは6月に1時的な増加がみられた. その後不着果樹が着果樹をたえず上回ったが, あまり増減が目立たず, 1月以後両樹とも増加した.酸加水分解性多糖類の含有率は糖やでん粉とはきわめて対照的に, 各器官とも4月から7〜9月まで増加し, 1月まで減少し, その後再び増加したが, 着果樹と不着果樹との間にほとんど含有率の差はみられなかった.以上の各分画を合計した機能態炭水化物含有率は, 不着果樹では各器官とも摘果後の増加が著しく, 着果樹を上回ったが, 着果樹では収穫後の増加が著しかったため, 1月以降はむしろ着果樹が不着果樹を上回る器官もみられた.2. 以上の結果を前報の乾物重の季節変化と関係させ, 両樹の各器官の機能態炭水化物絶対量を算出した.旧器官において, その季節変化は減少, 増加, 減少の3相に大別できた. この3相について, 光合成, 呼吸, 生長, 貯蔵炭水化物の蓄積と消費の諸項からなる物質収支表が作られた. それによれば, 両樹の生長に伴う炭水化物経済のありさまは次のようにまとめられた.第1相は4月5日 (ほう芽期) から5月31日 (新しょうの伸長停止期) までであり, 新生器官の生長に対する旧器官の貯蔵炭水化物の供給がみられた. それは主に旧葉と地下部とでなされたが, その供給量は全供給物質の3%にとどまったため, この相の物質生産量のほとんどは, 光合成作用により供給された.第2相は6月1日 (新しょうの伸長停止期) から1月11日 (発育停滞期) までであり, 着果•不着果両樹ともその著しい物質生産と同時に, 貯蔵炭水化物は各器官に蓄積された. しかしその蓄積量は, 着果樹ではこの相のΔPg の約16%, 不着果樹では約10%にとどまり, 器官の生長量を上回って本格的に蓄積される傾向は両樹ともほとんどみられず, 供給された物質の大半は呼吸と生長に用いられた.第3相は1月12日から2月25日まで (発育停滞期間) であった この相は各器官の物質生産がほとんどみられず, 両樹の1樹当り貯蔵炭水化物は再び消費された.着果樹の年間の1樹当り機能態炭水化物の蓄積量は約38gであり, 年間のΔPg の12%, ΔPn の29%に相当した. それは葉に9%, 枝に10%, 主幹部に6%, 地下部に18%そして果実に58%の割合で分配された. 不着果樹の年間の1樹当り機能態炭水化物の蓄積量は約28gであり, 年間のΔPgの8%, ΔPnの21%に相当した. それは葉に11%, 枝に22%, 主幹部に11%, 地下部に47%そして摘果期までの果実に9%の割合で分配された.
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