Graves ophthalmopathyを有し,経過中に甲状腺機能低下症より機能亢進症に移行した慢性甲状腺炎の1例
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概要
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症例は60才の女性.昭和57年4月頃から羞明,視力障害を認め,同年8月から複視や左眼瞼腫脹に気づき,しだいに増強したため,同年11月29日,当科に入院した.これまで発汗や動悸などはなく,抗甲状腺薬の服用歴もない.身体所見では,眼球突出はなかつたが左眼瞼腫脹を認め,左眼球運動は下転が著明に障害されていた.七条分類I度のびまん性甲状腺腫を触知した.甲状腺機能検査で,血中T3値は135ng/dl, T4値は6.2μg/d1と正常であつたが,遊離T4値は0.43ng/dlと低下し, TSH基礎値は67.2μU/mlと増加し,さらにTRH試験でTSHが過剰反応を示した. LATSは陰性であつたが,眼窩部CTスキャンでは,右外直筋を除くすべての外眼筋の腫大がみられ,腱部の腫大を伴わない点が特徴的であつた.甲状腺機能低下症に対して無治療のまま,第8病日にIVPを施行したところ,第25病日頃より発汗著明となつた.甲状腺機能検査で血中T3値324ng/dl, T4値19.2μg/dlと増加し, 123I-摂取率46.4% (3時間)と高値であり, T3投与により抑制されなかつた. TSH受容体抗体は陰性であつた.抗甲状腺薬投与により甲状腺機能が正常化した第93病日の甲状腺生検所見は,慢性巣状甲状腺炎を示す像であつた.本例は,甲状腺機能低下時よりCTスキャンにてGraves ophthalmopathyを示唆する所見を伴つている点より,経過中甲状腺機能亢進症に移行した,いわゆる“hypothyroid” Graves病である可能性が考えられた.
著者
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大沢 謙三
金沢大学医学部第一内科
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服部 信
金沢大学医学部第1内科
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西村 泰行
金沢大学医学部第一内科
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山本 哲郎
金沢大学医学部第一内科
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真田 陽
金沢大学医学部第一内科
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宮腰 久嗣
金沢大学医学部第一内科
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能登 裕
金沢大学医学部第一内科
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西村 泰行
金沢大学医学部第1内科
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