Glutaraldehydeの培養細胞に対する作用 ―L細胞に対する増殖抑制作用―
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概要
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glutaraldehyde(GA)のL株細胞に対する作用をformaldehyde(FA)を比較対照薬物として検討した.培養液中に種々の濃度で各薬物を混和して,24,48,72時間培養を行なった時点で生存細胞数を算定し,対照と比較した.先ず,実験Aでは,単層を形成した細胞の培養液にGA,FAを1〜1,000μg/mlの濃度で添加したところ,1μg/mlではGA,FAいずれも軽度の増殖抑制作用を示したが,その影響はFAの方がやや強かった.10μg/mlの場合は,FAでは著しい細胞数の減少が現われたのに対し,GAでは対照に比べて増殖率が低下するのみで,細胞数の増加は阻止されなかった.100,1,000μg/mlではGAもFAも細胞数の急激な減少を起こし,その変化はFAの方が著しかった.次に実験Bでは,細胞浮遊液中にGAは0.65〜80μg/ml,FAは0.65〜10μg/mlの濃度になるように添加して培養し,細胞に対する付着阻止および増殖抑制の程度を調べた.GAもFAも0.65μg/mlでは対照と変わらない増殖を示し,1.3μg/mlでは24時間後の細胞数が僅かに減少したが,両者間に差異は認められなかった.しかし,2.5μg/ml以上では付着阻止ならびに増殖抑制がFAでより強く現われるようになり,GAとの差は濃度が高くなるに従って大となり,FAは7.5μg/ml,GAは60μg/mlで全細胞が死滅した.24時間後の細胞付着阻止率によって,GAとFAの作用曲線を作成した結果,付着阻止作用発現の最小濃度はいずれも0.80μg/mlとなったが,50%阻止濃度はGAは14μg/ml,FAは5.0μg/ml,100%阻止濃度はGAは58μg/ml,FAは7.0μg/mlとなった.このようにGAは培養細胞に対して1μg/mlでも増殖抑制作用を示し,細胞毒性はかなり強いと考えられるが,全細胞を死滅させる濃度はFAの約8倍となったことから,GAの細胞毒性はFAに比ぺるとかなり低く,生体軟組織に対する作用もより緩和であると思われる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
大住 伴子
九州歯科大学共用試験OSCE実行委員会
-
黒木 賀代子
九州歯科大学歯科薬理学講座
-
村上 雄次
九歯大・歯薬
-
村上 雄次
九州歯科大学歯科薬物学講座
-
黒木 賀代子
九州歯科大学健康増進学講座口腔応用薬理学分野
-
大住 伴子
九州歯科大学 歯薬理
-
黒木 賀代子
九州歯科大学歯科薬物学講座
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大住 伴子
九州歯科大学歯科薬物学講座
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