薬用植物の栽培研究 : 大黄の栽培および調製について
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概要
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1.植付当年のほう芽率は65%,最終生存率は43%と低かった.生育は1年目と2年目とでは大きな差があり,地下部の重量は6.2kgでその中根頭部と根部の比率は4:3であった.10a作付の場合は欠株や気候,病虫害を考慮し株重平均4kgと推定できる.2。追肥は春に単肥配合肥料,夏〜秋に複合化成または有機質肥料を全面散布するのが効果的と思われる.3.10a当り収量を最大にするには栽培密度を90×60cmとするが,生薬大黄を製造する場合は100×100cmとするのが最も良い.4.自家不和合のため,同種間では結実しないが,異種間では簡単に交雑し結実する.5.株分苗は1〜数本の支根をつけると,活着,生育,収量ともよく,支根をつけた苗とつけない苗を比較するとほう芽率で前者は83%,後者は67%,1年目根重で前者は790g,後者で526gであった.大黄の調製-I(北大) 1962年よりR. palmatum L.の栽培試験に続いて調製を試みた.高嶺の報告等を参考にし,乾燥,燻製干を種々試みた.輸入大黄と外観,香気を比較また一部は薬理試験も合せ行なった.実験材料 薬学部薬草園で栽培した2年生株について調製を試みた.陽乾,加熱(180°,30分).泥土処理,醸酵処理,熱湯処理を行なったが外観,香味等は輸入品と異なり思わしいものは得られなかった.凍結乾燥調製 根茎部側芽切り取り繁殖を行ない北大薬草園にて栽培2年株を用い,根茎部および根部の未剥皮,および剥皮大黄で試験には生重1kgづつを用いた.その結果はTABLE Vに示す如くである.凍結温度が-28℃の場合内部組織の破壊は時間的に進行し,24時間処理では破壊が少ないが,これを反復した場合に内部組織は非常に粗〓となり,またこれにともない表面黒色化し,これは乾燥とともに固くなる,香気は48時間処理の場合が一番強く標品(メルク製大黄)に近い.自然凍結乾燥の場合,屋内外を問わず,気温の上昇とともに青カビが発生し,発生した個所は必ず黒変し組織が固くなる.また縦断した場合カビは中心部に発生していることもあり,これらを総合すると凍結時間を一定として人工乾燥を行なうことが均一な製品を生むものと思われる.大黄の調製-II(北薬試) 1965年冬より,湯通し後屋外乾燥,湯通し後屋外冷凍-醸酵-室内乾燥,湯通し後燻煙-乾燥が試みられたが湯通ししたものは一般に変色し組織がばらばらになり良品は得られなかった.屋外自然凍結(最低-36℃)後12時間室内乾燥したものは輸入大黄と外観性状も近かった.これを詳細に試験した結果はTABLE VIIのごとくである.これらの大黄の一部は生物学的試験による品質の鑑定を試みたがその結果は別に発表する予定である.凍結温度が-20℃以上では大黄特有の香気がつかないことがわかった.湯通しした場合は表面が青黒く変色し,組織が破壊されて,内質粗〓となる.生根を-20℃以下の温度で凍結し,これを室内乾燥すれば軽質の輸入大黄に近いものができるが,1-2mmの固い表殻のできること,色がやや淡く明るいこと(黒いこともある),肉質が不[table][table][photograph][photograph][photograph][photograph]均一なこと,香気の弱い点などに問題がある.冷凍室内凍結を行なった種類の中では乾燥直後の香気は72時間のものが最も強かった.また調製方法の相異にかかわらず乾燥歩留りは35%前後である.大黄調製の際多量のクズや地下部の半量を占める支根部の乾燥方法を知るための試験では2-4本に裂いて乾燥すれば手間も少く所要日数もみじかい.大黄の製薬原料にする場合は厚さ1cm程度のスライスとして乾燥するのが有利であろう.
- 日本生薬学会の論文
- 1971-06-20
著者
-
吉田 尚利
北海道医療大学薬学部
-
畠山 好雄
国立衛生試験所北海道薬用植物栽培試験場
-
三橋 博
北海道大学薬学部
-
吉田 尚利
北海道大学薬学部
-
三橋 博
北海道大学 薬
-
本間 尚治郎
国立衛生試験所北海道薬用植物栽培試験場
-
逸見 誠三郎
国立衛生試験所北海道薬用植物栽培試験場
-
水谷 次郎
北海道生薬協会
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