IgA腎症における可溶性L-セレクチンの血清濃度と腎間質病変

概要

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本研究の目的は,IgA腎症患者における腎組織におけるL-セレクチン発現および可溶性L-セレクチンの血清濃度と腎間質病変との関連性を検討することである.対象は,腎生検の結果と臨床所見からIgA腎症と診断された37例(男性18例,女性19例)で,平均年齢は38.4±2.2歳である.可溶性L-セレクチンの血清濃度は,市販のELISAキットを用いて測定した.腎生検組織におけるL-セレクチンの発現は,凍結切片を用いてLSAB法で免疫染色して確認した.IgA腎症患者における可溶性L-セレクチンの血清濃度(1.2±0.2μg/ml)は,年齢および性別を一致させた健常者のそれ(0.8±0.1μg/ml)に比し有意に高値を示した.腎生検組織におけるL-セレクチンは,間質における浸潤細胞に多量に発現していた.血清L-セレクチン濃度は,間質における細胞浸潤の程度と正の相関を示したが,腎機能や蛋白尿量との間には有意な相関性は認められなかった.これらの結果から,IgA腎症患者において,L-セレクチンは間質への細胞浸潤に関与していると推測された.また,可溶性L-セレクチンの血清濃度の測定は,腎間質病変の存在を予想するための指標になると考えられた.
東京女子医科大学の論文
2003-04-25