IgA腎症に対するアンギオテンシン系抑制薬の効果に影響を及ぼす組織学的因子の検討
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概要
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近年,高血圧を伴う慢性腎炎において,アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)およびアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は,抗蛋白尿効果と腎保護作用を有すると考えられるようになってきた.本研究の目的は, IgA腎症に対するACE-IとARBの効果に影響する組織学的因子を検討することである.対象は, 1993年1月から2000年5月まで当科でIgA腎症と診断された327例のうち,生検直後より2.5年以上にわたってACE-IもしくはARB投与した26症例である.経過中にステロイド加療を受けていない症例を選別した.腎生検時と比較して尿蛋白の減少が50%以上の群を反応群(n=12), 50%未満の群を非反応群(n=14)に分けて検討した.平均観察期間は61.1±28.6 vs 65.6±24.0ヵ月,生検時の臨床所見では年齢は42.8±12.6 vs 40.4±11.3歳,男女比5:7 vs 6:8,血清クレアチニン値(S-Cr)は1.35±0.33 vs 1.25±0.23mg/dl, 24hrクレアチニンクリアランス(Ccr)は67.5±17.1 vs 70.6±20.5ml/min,尿中赤血球数は35.7±58.4 vs 39.6±53.6/HPFと両群間に有意差はなかった.両群間で生検時の尿蛋白量に有意差は認められなかったが, 1.41±0.76→0.41±0.41(p=0.0006) vs 1.50±0.90→1.53±1.28(NS)g/dayと反応群では有意に蛋白尿が減少した.最終観察時では, S-Crは1.51±0.51 vs 1.64±0.68mg/dlと有意差は認めず,血圧は両群とも低下傾向を示したが有意ではなかった.病理所見では,糸球体硬化率,半月体形成率,癒着糸球体率,メサンギウムの増殖性変化,間質炎症細胞浸潤,間質線維化において有意差は認められなかった.しかし,「grade 0:なし, grade 1:軽度,grade 2:中等度, grade 3:高度」とgradingした動脈硬化の評価では,細動脈(0.92±0.52 vs 1.91±1.08, p=0.043)および小葉間動脈硬化(1.08±0.79 vs 1.78±0.97, p=0.033)は反応群において有意に軽い傾向を示し,細動脈の硝子様硬化部の面積率は有意に非反応群で高く(7.17±9.99 vs 21.0±17.5, p=0.01),内腔の面積率は有意に反応群で高かった(17.8±8.45 vs 13.6±6.73, p=0.02).これらの結果から,腎生検所見で動脈硬化が軽度なIgA腎症の症例に対して, ACE-IあるいはARBの抗蛋白尿効果がより期待できると考えられた.
- 東京女子医科大学の論文
- 2004-11-25
著者
-
新田 孝作
東京女子医科大学第4内科
-
内田 啓子
東京女子医科大学医学部第四内科学
-
二瓶 宏
東京女子医科大学第4内科
-
内田 啓子
東京女子医大内科
-
森山 能仁
東京女子医科大学第四内科学
-
湯村 和子
自治医科大学腎臓内科
-
二瓶 宏
東京女子医科大学第四内科学
-
二瓶 宏
長生学園
-
二瓶 宏
東京女子医科大学
-
湯村 和子
東京女子医科大学 第四内科
-
新田 孝作
東京女子医科大学 第4内科
-
新田 孝作
東京女子医科大学附属青山女性自然医療研究所 自然医療部門
-
湯村 和子
順天堂大学
-
湯村 和子
東京女子医科大学
-
森山 能仁
東京女子医科大学第4内科
-
森山 能仁
東京女子医科大学
-
内田 啓子
東京女子医科大学第四内科
-
二瓶 宏
東京女子医科大学腎臓内科
-
二瓶 宏
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター
-
湯村 和子
東京女子医科大学第4内科
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