肢体不自由児の性格・行動に関する研究(1)
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概要
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本調査は肢体不自由児の性格・行動に関して次のような目的で行なった。(1)肢体不自由児の性格・行動はどのようなものであるか調査すること。(2)肢体不自由をひきおこした原因や脳性まひの病型、年令などのちがいによって、性格・行動がどのように異なるか調査すること。このため、肢体不自由児の教育に長い経験があるか、または研究業績のある全国の教師に、日常場面で観察した肢体不自由児の性格・行動を自由に記述し報告してもらった。調査を依頼した教師は93名で、彼らがその性格・行動を報告してきた肢体不自由児は251名であった。報告された具体的な性格・行動についての記述を22の性格・行動類型(大項目)にまとめた。さらに、これらの大項目の内部で相互に類似した記述をいくつかのカテゴリー(小項目)に分類した。これらの項目の頻数を算出して肢体不自由児の性格・行動の特徴を研究した。研究結果は次のように要約できる。(1)肢体不自由児の性格・行動に、「活動過多性」や「固執性」、「自己統制の欠如」など、一般的な性格検査に含まれていないような性格・行動項目がみられた。この結果から、肢体不自由児の性格・行動をさらに研究する時、それらの項目を含む独自の質問を用意する必要性を示唆した。(2)脳性まひ児と非脳損傷肢体不自由児を比較すると、脳性まひ児では、(1)「活動過多性」「固執性」「自己統制の欠如」といった大項目と「がんこさ」「ふざける、はしゃぐ」といった小項目、および(2)「退行」といった大項目と「身体的接触を求める」「依頼心が強い」「泣く」「人なつっこい」「無頓着、乱雑、粗雑」などの小項目に報告が多くあることがわかった。従来、脳損傷児にみられるといわれている性格・行動が脳性まひ児の方に多く認められた。肢体不自由児は病因によって性格・行動に幾分異なったところがあると推察した。(3)各大項目の頻数を全頻数のうちで占める割合になおし、アテトーゼ型の方が痙直型より多い大項目はどれかを調べたが、まったく見いだすことができなかった。しかし、「一般的活動性」において、」活動的である」とする報告がアテトーゼ型の方に多いことがわかった。その他の結果をあわせて検討すると、アテトーゼ型の方がやや活動的外向的な傾向があると思われた。(4)脳性まひ児は年令が増すにつれて、「一般的活動性の欠如」すなわち「消極的」「意欲の喪失」などの報告と「回帰性傾向」すなわち「感情の変化がはげしい」などの報告がふえ、一方「退行性」すなわち「泣く」などの報告が減少することがわかった。非脳損傷肢体不自由児は同様に「消極的」などの報告が年令に伴なってふえるが、反面、「落ち着いている」などの報告が増すとともに、「泣く」などの報告がへることがわかった。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1970-06-01
著者
-
松原 達哉
東京教育大学
-
松原 達哉
筑波大学心理学系
-
藤田 和弘
東京教育大学
-
藤田 和弘
筑波大学心身障害学系
-
橋本 重治
東京教育大学
-
中司 利一
東京教育大学
-
藤田 雅子
東京教育大学
-
栗原 輝雄
東京教育大学
-
柳本 雄次
東京教育大学
-
中司 利一
筑波大学心身障害学系
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