肢体不自由児の経験と概念思考
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概要
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(目的)肢体不自由児は、身体的障害のほかに、多くの随伴症状をもっているために、経験が不足しているといわれている。そこで、次の二つを研究の目的とした。(1)肢体不自由児は、普通児に比べて、社会科学習上必要な経験のうち、どのような事物、事象の経験が不足しているかを研究すること。(2)経験の程度によって、概念思考は影響をうけるかどうか。さらに、概念思考は脳損傷によって影響をうけるかどうかを実験的に研究すること。(方法)(1)第1目的の実験方法:小学校1〜3年で学習する社会科の内容から、(1)社会科の学習上重要なもの、(2)一般性のあるもの、(3)スライドの絵になるもの、(4)なるべく各領域(政治、くらし、交通、通信、商業、工業、農林業、水産業、歴史、地理的内容)にわたるようにすることを考慮して、40項目選択した。これを、一項目ずつスライドで児童に見せて、絵の理解、経験の程度などを調査した。被験者は、東京、神奈川の6つの肢体不自由児養護学校と1つの普通校の1年生である。これらを普通児群、脳性まひ児群、ポリオ児群の3群にわけたが各群とも男女各10名ずつで合計60名が対象である。被験者は、性、CA、MAで統制した。(2)第2目的の実験方法:概念思考を実験する方法として、「絵-品物テスト」法を用いた。すなわち、海水浴、魚つり、消防署、郵便局の4つの対象物に対して、それぞれ10種の絵を見せて、関係のあるものを結ばせるテスト法を用いた。関係づける絵は本質的なものと異質的なものとがある。被験者は、(1)実験と同一で60名を用いた。(結果)(1)肢体不自由児は、普通児に比較して、家庭外的な経験(例、魚つり、遠足、交番、盆おどりなど)がより多く不足している。(2)普通児の女児は家庭内的経験が男児より多いのに肢体不自由児は、普通児と違って男女に、こうした経験の差はなかった。(3)脳損傷のない普通児、ポリオ児らは、経験が多くなると、海水浴についての概念思考はよくできる傾向があった。しかし、魚つりについては、明白な傾向は見られなかった。(4)脳損傷のある脳性まひ児は、経験が多くなっても概念思考は劣り、脳損傷が概念思考に何らかの悪影響を与えていることがわかった。すなわち、脳性まひ児は、普通児やポリオ児と経験が同じか多いのに、消防署、海水浴、郵便局などの対象物に、本質的なものを関係づけることは少なく、異質的なものを多く関係づけている。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1969-09-30
著者
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