肢体不自由児の社会的成熟度
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概要
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本研究は、肢体不自由児の社会的成熟度について、つぎの3つの目的で行なった。1)CP児の中でも障害部位別に社会的生活能力の発達を比較検討すること。2)CP児とPolio児の社会的生活能力の発達の違いを研究すること。3)肢体不自由児の社会的生活能力の個人差について比較研究すること。研究方法は、社会的成熟度に関する180項目からなる質問紙法を用いて調査した。これらの項目は、作業能力、運動(移動)能力、意志交換能力、集団への参加能力、自発性、自己統制、基本的習慣(清潔・排泄・着衣・睡眠・食事)の7領域に分かれている。質問紙は、全国の10肢体不自由児養護学校に在学中のCP児588人とPolio児98人の母親または保護者に配布して記入された。年令は6〜13才までである。なお、CP児は、障害部位別に、P(両下肢まひ)、Q(両上肢両下肢まひ〉、H(体の片側まひう、T(片側の上肢と下肢まひ)の4群に分類した。これらの研究結果は、つぎのように概括できる。1)CP児の中でも障害程度によって、比較的重いQ群と比較的軽いP群とを比較すると、社会的生活能力の中でも、日常の生活動作に直接影響を与xるような諸動作たとえば作業能力、清潔、着衣、食事などの諸能力に差異が現われている。しかし、ことばや知的意志的な諸能力たとえば意志交換能力、集団への参加能力、自発性、自己統制などの諸能力には、これらの傾向はあまりみられなかった。2)CP児とPolio児の社会的成熟度を比較すると、ごく一部の年令を除いて、社会生活能力・基本的習慣のいずれにおいてもCP児は、Polio児に比較して、どの年令においても劣っていた。これは、Polio児は、ビールスによって脊髄が侵されているが、知的には正常児と変わらず、まひの程度もCP児ほど重くないため、生活経験も移動能力もCP児より高いためと考えられる。反面、CP児は、脳の運動中枢部等の障害によるため、運動発達、知的発達などがひどく遅れているために、社会性の発達も遅いと考いられる。なお、CP児の平均SQは57であり、Polio児の平均SQは101であった。肢体不自由児全体の平均SQは64であった。3)肢体不自由児の個人差については、その種類や起因疾患などが種々雑多であって、その程度もまちまちである。そのため普通児に比較して社会的成熟度の個人差は著しく大きい。なお、CP児とPolio児とを比較すると、CP児の個人差の方が大きい。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1967-03-31
著者
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