R.C.P.M. (Raven's Coloured Progressive Matrices)に関する一考察
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概要
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本研究の目的は,RCPM (Raven's Coloured Progressive Matrices)の妥当性を検討するために(1)RCPMとWISCの併存的妥当性,(2)RCPMの各項目の通過率,(3)RCPMの各項目の弁別力,(4)RCPMのテスト項目の内部均一性の4点について調べ,あわせて脳性まひ児に適する知能テストといわれるRCPMがどのような特徴をもつテストかをWISC下位検査との相関から考察を加えることである。被験児は,普通児42名(平均CA8才10ヵ月)と脳性まひ児53名(平均CA9才)で,脳性まひ児については53名のうちからWISCの適用が適切な者29名を選んだ。これらの被験児にWISCとRCPMを実施し,二群のテスト成績をそれぞれの目的ごとに比較検討する方法をとった。その結果は以下のようである。(1)RCPM得点とWISC全検査IQとの相関は,普通児群.691,脳性まひ児群.698であった。(2)普通児群には,RCPMの3つのSetのうち少なくとも2つのSetの項目がやさしすぎ,各項目の難易度の順位が不適切であったが,CP児群にはほぼ適切な難易度の順位であった。(3)G-P分析によると,普通児群においてはSet AとAbの項目の大部分に弁別力がなく,CP児群には3つのSetとも約2/3の項目に弁別力があった。(4)RCPMの内部均一性係数は,普通児群.793,脳性まひ児群.854であった。また,RCPMは,両群ともWISC言語性IQよりも動作性IQとの相関が高く(普通児群では,.508,.740,脳性まひ児群では.528,.730),一般的理解および符号問題といった下位検査との相関が低かった。このことからRCPMは,主として視知覚とそれに関連する推理を中核とする知的能力を測定する非言語性テストであると考えられた。最後に,RCPMの脳性まひ児に対する利用価値として,このテストが運動機能障害の程度に関係なく言語性知能とは異質の面を含む視覚・空間関係に対処する能力を測定できることがあげられ,また,このテストの問題点として,次の二点があげられた。すなわち,RCPMが個別式テストとしての十分な妥当性と信頼性を備えていないで,補助テストとしてしか使えないこと,およびRCPMは知覚障害を有するCP児の知能を低評価するのではないかということである。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1971-12-01
著者
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