ニホンイヌワシの採餌環境創出を目指した列状間伐の効果
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概要
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現在、ニホンイヌワシAquila chrysaetos japonicaは天然記念物および絶滅危惧IB類に指定されており、その繁殖成功率は最近30年間で急速に低下している。繁殖の失敗をもたらすと考えられる要因の中で、近年、鬱閉した針葉樹人工林の増加による採餌環境の悪化が注目されつつある。この対応策として、2002年、林野庁は岩手県北上高地に生息するイヌワシの繁殖成績を改善するため、列状間伐による森林ギャップの創出を試みた。イヌワシの採餌環境としての列状間伐の有効性を評価するため、林野庁が試験的に実施した列状間伐区、間伐区と環境が類似している非処理対照区および事前調査によりイヌワシの採餌行動が度々確認された採餌区の3調査区を設け、イヌワシの探餌頻度および北上高地に生息するイヌワシの主要な餌であるノウサギとヘビ類の個体数を比較した。ノウサギ生息密度の指標となる糞粒数は、間伐区において伐採翌年に著しく増加したが、伐採2年後には減少し、3年後には伐採前とほぼ同じ水準まで減少した。ヘビ類の発見個体数は、調査期間を通していずれの調査区においても少なかった。イヌワシの探餌頻度は、調査期間を通して間伐区よりも採餌区の方が高かった。このように、本研究で実施された列状間伐は、イヌワシの餌動物を一時的に増やすことに成功したものの、イヌワシの探餌行動を増加させることはできなかった。今後、イヌワシとの共存を可能にする実用的な森林管理方法を提唱するため、イヌワシの採餌環境を創出するための技術的な問題が早急に解決される必要がある。
- 2007-11-30
著者
-
由井 正敏
岩手県立大学総合政策学部
-
松木 吏弓
(財)電力中央研究所環境科学研究所生物環境頒域
-
阿部 聖哉
(財)電力中央研究所環境科学研究所生物環境頒域
-
竹内 亨
(財)電力中央研究所環境科学研究所生物環境頒域
-
梨本 真
(財)電力中央研究所環境科学研究所生物環境頒域
-
石間 妙子
新潟大学大学院自然科学研究科
-
関島 恒夫
新潟大学大学院自然科学研究科
-
大石 麻美
新潟大学大学院自然科学研究科
-
井上 武亮
(財)日本鳥類保護連盟
-
前田 琢
岩手県環境保健研究センター
-
関島 恒夫
東京大学農学部森林動物学教室
-
関島 恒夫
神奈川科学技術アカデミー
-
阿部 聖哉
電力中研 我孫子研
-
阿部 聖哉
(財)電力中央研究所
-
松木 吏弓
財団法人 電力中央研究所 環境科学研究所
-
梨本 真
(財)電力中央研究所我孫子研究所
-
梨本 真
(財)電力中央研究所 我孫子研究所 応用生物部
-
松木 吏弓
電力中央研究所
-
梨本 真
電力中研 我孫子研
-
Matsuki Rikyu
Central Research Institute of Electric Power Industry
-
Matsuki Rikyu
Biological Environment Sector Central Research Institute Of Electric Power Industry
-
Matsuki Rikyu
Environmental Science Research Laboratory Central Research Institute Of Electric Power Industry
-
Sekijima T
Niigata Univ.
-
Sekijima Tsuneo
Graduate School Of Science & Technology Niigata University
-
Sekijima Tsuneo
Laboratory Of Forest Zoology Faculty Of Agriculture The University Of Tokyo
-
Sekijima Tsuneo
Laboratory Of Forest Zoology Faculty Of Agriculture University Of Tokyo
-
由井 正敏
岩手県立大学
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