水系ネットワークの再生による氾濫原環境の修復
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概要
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旧建設省によって始められた多自然型川づくりは、日本の川づくりのあり方を大きく変えてきた。それまで治水利水重視だった川づくりから、河川環境の保全や復元を視野に入れた川づくりに移行した大きな変化点である。その後、平成9年の河川法改正、平成14年の自然再生推進法、平成16年の景観法の成立といった制度化が進み、多自然型川づくりは着実に進められた。さらに、平成17年には多自然型川づくりの見直しと方向性を検討するためのレビュー委員会が設けられ、その成果を受け、翌年には「多自然川づくり」が河川局から通達された。河川環境の保全や復元に関する川づくりは着実に進められているが、近年、氾濫原を利用する魚類や淡水貝類の減少が危惧されている。例えば、新潟県Red Data Book 2001(魚類・淡水貝類)を見ると、リストに掲載されている魚類16種のうち氾濫原依存種(生活史段階で氾濫原を利用する)が7種、そして淡水貝類においても全体で14種、そのうち11種と、氾濫原依存種の減少が目立っている。同様の傾向は愛知県や佐賀県でも見られ、このような氾濫原依存種の減少は日本全体の課題と考えられる。本論では、次章で一時的水域(氾濫原)の減少と生物の応答について述べ、III章からV章で氾濫原環境の修復や再生、特に水系ネットワークの再生に注目した最近の取り組みを紹介する。VI章のおわりにでは、氾濫原環境の再生の課題と方向性について考察する。
- 2009-04-00
著者
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石間 妙子
新潟大学大学院自然科学研究科
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関島 恒夫
東京大学農学部森林動物学教室
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Sekijima T
Niigata Univ.
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Sekijima Tsuneo
Graduate School Of Science & Technology Niigata University
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Sekijima Tsuneo
Laboratory Of Forest Zoology Faculty Of Agriculture The University Of Tokyo
-
Sekijima Tsuneo
Laboratory Of Forest Zoology Faculty Of Agriculture University Of Tokyo
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