放牧草地におけるチモシー個体群の結実率の変異

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風媒他殖のイネ科多年生種,チモシーの放牧草地個体群(40×45m)の種子繁殖の様相を知るために,結実率の個体群内変異を調査するとともに,袋掛けによる自殖率の推定と,穂密度を高め潜在的結実率の調査を行った。また,牧柵で囲み牛の侵入を防いだ区を設置し,放牧圧がない場合の結実率を調査した。袋掛けによって調べたチモシーの自殖率は0.01〜0.03と低かった。花粉量が豊富な場合の結実率は0.93で,ほとんどの小花が種子となった。個体群の結実率は0.01〜0.23と低く,近接した細個体群間で異なり,湿地>斜面>平坦地の順であった。各細個体群内の結実率に変異があり,最大0.10〜0.40の穂があった。平坦地は放牧圧が強く,穂の位置が低く,倒伏分げつが多いため,花粉の散布・獲得の効率が低く,結実率が低下すると考えられる。他方,湿地は放牧圧が弱く,穂の位置が高く,倒伏分げつが少なく,穂が集中分布するため,花粉の散布・獲得の効率が高く,結実率が高いと考えられる。無放牧下の結実率は,平坦地で0.36,湿地で0.47と高かった。穂密度の増加により,全体の花粉量が増加して,結実率を高めたと考えられる。チモシーの結実率は放牧圧・近隣植生・倒伏程度・穂密度に左右され,近接した細個体群間で変異を生じる。個体群はそれぞれの微細環境に対応した細個体群から構成されている。
日本草地学会の論文
1985-02-25

放牧草地におけるチモシー個体群の結実率の変異

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