テンサイとその近縁野生種B. macrocarpaの戻し交雑分離後代における異常分離
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概要
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テンサイと近縁野生種B. macrocarpaの種間雑種戻し交雑後代における酵素遺伝子座と胚軸色に係わるR遺伝子座の分離を調査した。調査した酵素遺伝子座は互いに独立遺伝するグルタミン酸オキサロ酢酸転移酵素-2(Got-2)、ロイシンアミノペプチダーゼ(Lap)、グルタミン酸脱水素酵-2(Gdn-2)、酸性フォスファターゼ-1(Aph-1)、パーオキシダーゼ-2(Px-2)の5つである。戻し交雑世代の分離は、戻し交雑を行う際にF_1雑種を花粉親として用いるか種子親として用いるかにより大きく異なり、花粉親としたときに調査したすべての遺伝子座で異常分離が観察された(Table 1と2)。これらのうち、R、Got-2、LapおよびGdh-2の分離は交雑に供試したテンサイやB. maritimaの系統にかかわりなく、B. macrocarpa由来の遺伝子が、連鎖対であるRとGot-2で過剰に、LapやGdh-2で過少に分離した。一方Aph-1やPx-2の分離は供試系統によって異なり、特にAph-1ではテンサイおよびB. macrocarpaのいずれの方向に戻し交雑した場合でも反復親の遺伝子頻度が増加する傾向にあった。これらの結果とは対照的に、F_1雑種を種子親として戻し交雑を行ったときは、Rを除くすべての遺伝子座で正常な1:1の分離が観察された(Table 3と4)。F_1雑種は花粉および種子が部分不稔であること、供試した戻し交雑後代では出芽から酵素遺伝子型を調査した5〜6週齢に至るまで致死性が観察されなかったこと、また分離頻度が相反交雑間で異なったことから、観察された分離頻度の歪みは、F_1雑種における花粉や胚の部分的な発育退化、柱頭による特定花粉の選抜または競争受精に原因すると考えられた。特に、酵素遺伝子座を染色体マーカーとした解析から、Lapと花粉不稔性に係わる遺伝子との間に連鎖関係が示唆され(Table 7)、この遺伝子座における分離頻度の歪みが花粉の致死性に原因するものと推察された。更に、2遺債子分離を解析した結果、連鎖対(RとGot-2)を除く計14の2遺伝子組合せ中6組合せで、ランダムな遺伝子組合せからの期待頻度と有意に異なった2遺伝子分離が観察された(Table 5と6)。特にLapの分離は他の遺伝子座の分離と強く関連しており、この遺伝子座の分離頻度の歪みは、前述した花粉の致死性に加え、他の障害が関与した複合的な結果であると考えられた。また遺伝子間の分離の依存性から、個々の遺伝子座の異常分離を引き起こす障害が異なった染色体上に位置する複数の遺伝子に支配されていると考えられた。
- 日本育種学会の論文
- 1988-09-01
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