個体間競争によって生じた小空隙におけるチモシー(Phleum pratense L.)の実生の加入 : 模擬草地における研究

概要

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多年生イネ科草種の実生加入の可能性について,「種子散布後,地上部植生を頻繁に除去される条件下では,実生は加入することができる」という仮説を検証するために,チモシー模擬草地において実生加入の調査を行った。1984年4月から12月まで(2個の方形区については1985年3月まで),チモシーの実生の定着とデモグラフィーを追跡調査した。その結果,実生の定着が頻繁に生じており,この実験集団の構成メンバーとして実生由来の個体が重要な位置を占めることが明らかになった。8方形区(面積8800cm^2)で追跡調査した102個の実生のうち,60個体(58.8%)が12月まで生存し,その合計乾物重は集団全体の13.9%を占めるに至った。さらに,1985年3月まで追跡した2方形区(面積2200cm^2)においては,実生由来の3個体が出穂した。模擬草地内には個体間競争の結果,小空隙が多数発生した。しかし,これらの多くは調査期間中,実生に利用されることはなかった。実生の生存と成長は近隣の成個体によりある程度影響を受けた。以上の模擬草地調査の結果から仮説は支持され,多年生イネ科草種であっても,種子繁殖が個体群サイズの維持に重要となる条件のあることが示唆された。
日本草地学会の論文
1994-07-30