日本国内のシロクローバ自生集団におけるシアン生成の緯度的及び高度的クライン

概要

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我が国のシロクローバ自生集団は,地理的には北海道から沖縄まで,高度的には低地から標高1000m以上にまで広く分布している。本研究では,シアン生成表現型(シアン化水素産生型のACLiと非産生型のAcli,acLi,acli)の緯度的変異と,富士山麓における高度的変異を分析することを目的とした。北海道・東北から九州までの14集団と,富士山麓の標高を異にする4集団について,ピクリン酸塩紙法を使ってシアン生成表現型の頻度を分析した。その結果,日本国内のシアン化水素産生型AcLiの頻度の緯度的変異パターンは,ヨーロッパにおけるものとおおよそ一致することが確認された。北海道や東北の北部集団ではAcLi頻度が低いのに対して,静岡以南の南部集団では概して高い傾向にあった。しかし,静岡以南を詳しく分析すると,緯度と関連した一定の傾向は観察されず,集団間で頻度が大きくばらついた。一方,富士山麓での分析から,AcLi頻度の高度的クラインが観察され,低地集団で高く,高地集団で低い傾向にあった。約30年の間にこのような変異パターンが形成されたものと推察された。表現型AcLiの農業的意味について考察した。
日本草地学会の論文
1996-10-31