東北地方のブナ林天然更新施業地の現状 : 二つの事例と生態プロセス(<特集>天然林施業に貢献する生態学)
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概要
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皆伐母樹保残施業から30年後のブナ林と,10年前に弱度の伐採が行われたブナ林で施業法を評価した。皆伐母樹保残施業地では,伐採10年後にブナの更新完了基準を満たしていたが,現在ではブナは小サイズに偏り,ホオノキやウワミズザクラ等に被圧されていた。これは,更新の初期段階で下された更新の成否判定が妥当ではなかったことを示す。弱度の伐採でも,高密度で更新したのはウダイカンパやホオノキ等で,ブナは少なかった。ただし,さらに下層を除去し入念な下刈を加えるとブナ稚樹が増加した。この方法は,ブナの天然更新には有効な施業法かもしれないが,林分構造の回復に時間がかかることや実行コストの点で問題がある。皆伐母樹保残施業地で,今後新たな種子散布を利用してブナ椎樹を増やすことも,散布後から発芽まで生残した種子は少なく,空間分布も不均質なことから,林業的に良好な更新は期待できそうもなかった。しかし,種子の生残率や出現実生の密度自体は施業当時よりも改善されており,施業からの時間とともに生態プロセスが変化する可能性が示唆された。よって施業地の将来を見定めるためには,さらに長期の継続調査を要すると考える。
- 日本森林学会の論文
- 2003-08-16
著者
-
太田 敬之
森林総合研究所
-
杉田 久志
森林総合研究所東北支所
-
杉田 久志
独立行政法人森林総合研究所東北支所
-
澤田 信一
弘前大学農学生命科学部
-
長池 卓男
山梨県森林総合研究所
-
正木 隆
森林総合研究所森林植生研究領域
-
松井 淳
奈良教育大学生物学教室
-
金指 達郎
森林総合研究所
-
金指 達郎
林業試験場
-
中静 透
総合地球環境学研究所
-
櫃間 岳
森林総合研究所東北支所
-
酒井 暁子
東北大学大学院理学研究科
-
新井 伸昌
新潟大学大学院自然科学研究科
-
市栄 智明
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
-
上迫 正人
新潟大学大学院自然科学研究科
-
神林 友広
岩崎村役場
-
畑田 彩
京都大学生態学研究センター
-
沢田 信一
弘前大学農学生命科学部生物機能科学科
-
正木 隆
森林総合研究所
-
金指 達郎
(独)森林総合研究所
-
太田 敬之
(独)森林総合研究所
-
松井 淳
奈良教育大学
-
畑田 彩
総合地球環境学研究所
-
酒井 暁子
横浜国立大学大学院環境情報研究院
-
酒井 暁子
東北大 大学院理学研究科
-
酒井 曉子
東北大学大学院理学研究科
-
杉田 久志
森林総合研 東北支所
-
Nagaike Takuo
Graduate School Of Science And Technology Niigata University
-
太田 敬之
(独)森林総合研究所東北支所:(現)(独)国際農林水産業研究センター
-
沢田 信一
弘前大学農学生命科学部
-
沢田 信一
弘前大学理学部
-
太田 敬之
森林総合研究所東北支所
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