ヒバ天然林における択伐が稚樹の発生・消長に及ぼす影響
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概要
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岩手県川井村の早池峰山北麓のヒバ天然林において,択伐がヒバ稚樹の消長に及ぼす影響を明らかにするために,択伐区と対照区における稚樹の発生密度,生存率の推移,成長を比較した。択伐の翌年に発生した実生の2年目の秋における生存率は,対照区で11%,択伐区で29%であり,択伐区の方が有意に高かった。択伐後8年目での生存率は対照区で0.6%,択伐区で14.5%であり,サイズも択伐区の方が有意に大きかった。択伐後3年目に発生した実生も択伐区の方がサイズが大きく,密度も高かった。前生小稚樹(樹高10cm未満)は択伐翌年の夏に択伐区で多くが枯死したが,択伐後8年目には対照区との生存率に有意差はなくなっており,高さは択伐区の方が有意に大きくなった。前生大稚樹(樹高10cm以上)では択伐の有無に関わらずほとんど枯死はみられず,樹高成長は択伐区の方が大きかった。択伐による生存率の改善は特に択伐後に発生した実生で大きく,択伐は稚樹の成長を促すだけでなく,実生の定着を促進させるためにも有効であることが示された。
- 日本森林学会の論文
- 2004-08-16
著者
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太田 敬之
森林総合研究所
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太田 敬之
(独)森林総合研究所
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中村 松三
森林総合研
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中村 松三
(独)森林総合研究所
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糸屋 吉彦
(独)森林総合研究所
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太田 敬之
(独)森林総合研究所東北支所:(現)(独)国際農林水産業研究センター
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太田 敬之
森林総合研究所東北支所
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