冬期に生育するコムギの純同化率におよぼす低温の影響について
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概要
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越年する一年生植物のある種は冬期の厳しい環境下で緑葉を着けて生活し, 生長を続ける.一方, 冬期に休眠状態で越年する植物では多量の貯蔵物質を所有し, それをもとに生命を維持する.これに対して前者の植物は多くの場合, 貯蔵物質をその時期にほとんど所有せずしたがって冬期の厳しい環境下で光合成をおこない, えられた光合成産物をもとに生活をおこなわねばならない, したがって冬期の厳しい環境条件はその植物の生長に対して影響を与えると同時に, 光合成へも大きな影響を与えると考えられる.葉を着けたまま越年する一年生植物の一例である秋播のコムギを用いて冬期の生長および光合成能力について実験をおこなった.冬期に異った温度条件を示す東京都下保谷および新島に生育したコムギの純同化率について比較した結果, 冬期3ヶ月間の純同化率は保谷(平均気温, 4.7℃)では0.40gd.w./dm^2/week, 新島(8.9℃)では0.90であった.冬期の低温条件下では純同化率は温度に強く依存し, また純同化率の低温による低下は主に低温下に置れた植物体の光合成能力の生理的低下に基因していると推論された.
- 日本生態学会の論文
- 1973-12-20
著者
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澤田 信一
弘前大学農学生命科学部
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沢田 信一
弘前大学理学部生物学科
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沢田 信一
Department of Botany, Faculty of Science, University of Tokyo
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