1,1-Dimethylhydrazineによる大腸化学発癌に及ぼすアルコールの影響

概要

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【目的】大酒家には大腸癌が高頻度に発生するが,アルコール(AL)が大腸発癌にどのように関与しているかは明らかではない。今回,環境中に存在する発癌物質である1,1-dimethylhydrazine (1,1-DMH)を用い,大腸発癌に及ぼすALの影響について検討した。【方法】Wistar系雄性ラットを5%AL含有(AL群)あるいはその等カロリーを炭水化物(C群)で置換した液体飼料で4週間飼育後,1,1-DMHを15週間投与し,さらに液体飼料のみで20週間飼育した。飼育39週目に屠殺し,摘出大腸をホルマリン固定後,メチレンブルーで染色し,大腸粘膜のaberrant crypt foci (ACF)の出現状況を観察した。また,β-cateninおよびCYP2E1を免疫組織化学的に染色した。【成績】ACF数は,C+1,1-DMH群(0.6±0.5個)に比べ,AL+1,1-DMH群(4.4±2.5個)で有意(P<0.001)に多かった。β-catenin accumulated cryptは,AL+1,1-DMH群でのみ検出された。CYP2E1は,大腸および肝のいずれにおいてもAL群で強く染色された。【結論】ALの長期投与により肝および大腸粘膜のCYP2E1が誘導されたが,このことが1,1-DMHの代謝を促進し,発癌性に富む代謝産物を増加させ,大腸粘膜の前癌性病変発現を促進したと考えられた。