アルコール性肝障害におけるacetaldehyde-derived advanced glycation end-productの関与について : 慢性アルコール投与ラットでの検討

概要

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【目的】グルコースの終末代謝産物であるadvanced glycation end-products(AGE)は諸種の病態に関与するが,グルコースよりも短鎖であるアセトアルデヒドからもAGE(AA-AGE)が産生され,AA-AGEは他のAGEよりも強い細胞毒性を有することが報告された。このことは,AA-AGEがアルコール(AL)性肝障害の発生・進展に関与している可能性を示唆していると考えられる。しかし,AA-AGEが肝細胞に対して障害作用を有するか否か,また,飲酒により肝でどのように変動するのかは明らかではない。そこで,AA-AGEの肝細胞障害作用について培養ラット肝細胞を用いて検討するとともに,慢性飲酒によるAA-AGEの血中と肝臓での変動を慢性AL投与ラットを用いて検討することとした。【方法】Wistar系雄性ラットから分離・培養した肝細胞にAA-AGE,N-ethyllysine(NEL),あるいはbovine serum albumin(BSA)をそれぞれ0.25mg/mlあるいは0.5mg/ml添加し,培養24時間と48時間後の肝細胞生存率について検討した。また,ラットを36%AL含有(AL群)あるいはその等カロリーを炭水化物で置換した液体飼料(C群)でpair-feedingを行ない,飼育後4,6および8週目に屠殺し,血液を採取するとともに肝を摘出した。血清AA-AGE値は,抗AA-AGE抗体を用いてELISA法で測定した。摘出肝からパラフィン切片を作製し,ヘマトキシリン・手オジン染色とともにAA-AGEおよびNELに対する抗体を用いて免疫組織化学的染色を行った。なお,AL群については,飼育8週後にコントロール飼料に置換し,その後12週まで2週間隔で屠殺し,同様に検討した。【成績】0.25mg/mlのAA,AGEの添加により培養肝細胞の生存率は,BSA添加群に比べ24時間で86%に,48時間で61%に低下し,48時間培養の生存率の低下はBSAおよびNEL添加群に比べ有意(P<0.001)であった。0.5mg/mlのAA-AGE添加での肝細胞生存率は24時間で47%(P<0.005)に,48時間で34%(P<0.001)となった。NEL添加群でもその生存率は,24時間で72%に,48時間で51%と有意(P<0.05)に低下した。血中AA-AGE値には,AL群とC群で明らかな差は認められなかった。AA-AGEの免疫組織化学的染色についてみると,AL群では6週目から中心静脈域の肝細胞の細胞質に染色されるようになり,8週目にはその染色性はさらに強くなった。また,NELもAA-AGEに比して染色性は弱いものの,AA-AGEとほぼ同様のパターンで染色された。なお,C群ではいずれも染色されなかった。AA-AGEの染色性は,AL含有飼料8週投与に引き続いてコントロール飼料置換後10週まではほとんど変化せず,12週目でほぼ消失した。【結論】AA-AGEはアセトアルデヒドアダクトと考えられるNELよりも肝細胞障害作用が強く,主に中心静脈周囲の肝細胞で産生されることが明らかになったことから,AL性肝障害の発生・進展に関与している可能性があると考えられた。
金沢医科大学の論文

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