非アルコール性脂肪肝炎とアルコール性肝炎における血清学的ならびに免疫組織化学的差異の検討
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概要
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【目的】非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis : NASH)の診断は病理組織学的に行われるが,NASHに特有なマーカーがないため厳密な除外診断が必要で,特に過剰の飲酒が関与していないことを確認することが必須である。しかし,正確な飲酒歴を確認することはきわめて困難で,NASHと診断されたなかには常習飲酒家が含まれている可能性がある。一方,従来より飲酒の血液生化学的マーカーについては種々の面から検討されてきているが,NASHとアルコール性肝炎におけるこれらのマーカーの相異については明らかではない。そこで今回,NASHとアルコール性肝炎を生化学的および組織学的に鑑別することが可能か否かを飲酒の生化学的マーカーを中心に検討することとした。【方法】NASH13例とアルコール性肝炎26例を対象とし,飲酒の血液生化学的マーカーとして用いられている血清AST・ALT,γ-GTPおよびヒアルロン酸値を測定するとともに,AST/ALT比および平均赤血球容積(MCV)を算出した。また,血清carbohydrate-deficient transferrin (CDT)値を測定した。さらに,同症例の生検肝組織について,transferrinを認識する抗transferrin抗体(polyclonal抗体)とCDTを認識するmonoclonal抗体(CT283)を用いて免疫組織化学的に染色した。【成績】飲酒マーカーのうち,血清AST値,血清AST/ALT比,血清γ-GTP値,MCVおよび血清CDT値は,NASH患者に比ベアルコール性肝炎患者で有意に高値を示した。しかし,血清CDT値を除き,いずれのマーカーにおいても両者の間に測定値の重なりが認められた。一方,血清CDT値は,NASHの全例がcut off値(2.66%)以下であり,アルコール性肝炎の全例がそれ以上で,両病型間において血清CDT値に重なりは認められなかった。生検肝の免疫組織化学的染色では, polyclonal抗体を用いるとNASHおよびアルコール性肝炎のいずれにおいても肝細胞が強く染色された。一方,CT283を用いた染色では,NASHでは全く染色されなかったが,アルコール性肝炎では全例において肝細胞の細胞質,特にballooningを来した肝細胞に強い染色性が認められた。【結論】飲酒の血液生化学的マーカーのうち血清CDT値からNASHとアルコール性肝炎の鑑別がほぼ可能であると考えられた。また,CDTを認識するCT283を用いた免疫組織化学的染色の差異は,NASHとアルコール性肝炎を組織学的にもある程度鑑別できることを示唆していると考えられた。
- 金沢医科大学の論文
著者
-
堤 幹宏
金沢医科大学医学情報学
-
高瀬 修二郎
金沢医科大学消化器機能治療学(消化器内科学)
-
堤 幹宏
金沢医科大学消化器機能治療学
-
大塚 俊美
金沢医科大学消化器機能治療学
-
高瀬 修二郎
金沢医科大学消化器機能治療学
-
高瀬 修二郎
金沢医科大学
-
堤 幹宏
金沢医科大学
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