相模湾と相模灘産多毛環虫類
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概要
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相模湾と相模灘における動植物相の特徴を明らかにすることを目的とした総合調査が,独立行政法人国立科学博物館によって2001年から2005年にかけて実施された.この間,他機関の調査船や漁船の協力のもとに,123地点から得られた多毛類の分類学的研究を行った.日本における多毛類の分類学的研究はMarenzeller(1879)によってはじめられ,McIntosh(1885),Moore(1903),Hessle(1917,1925)などが相模湾とその他の海域から報告している.日本人では飯塚啓が1902年から14年にかけて研究し,1912年には日本各地から124種を報告し,そのうち相模湾産は56種であった.その後Okuda(1938)が下田付近の須崎から74種を,今島(1968a)が葉山から87種を,今島(1968b)が相模湾と相模灘から31種の深海性多毛類を,今島・林(1969)が三崎から61種,Imajima&Gamo(1970)が真鶴から29種,そしてImajima(1982a)が下田から149種と31未確定種を報告した.昭和天皇は1926年から1988年にわたって,相模湾の主に東方海域の底生動物を集中的に採集され,そのうち多毛類はImajima(1997,2003)が研究し,現在のところ20科,148種が明らかにされているが,未研究の標本を加えて230種くらいと予想される.本調査では東京大学大学院理学研究科附属臨海実験所の臨海丸,独立行政法人海洋研究開発機構の淡青丸,東京海洋大学の神鷹丸,横浜国立大学附属理科教育実習施設のたちばな,日本大学生物資源科学部臨海実験所のすざきIIと8隻の漁船の協力を得て,主に三浦半島西岸沖合と南方海域,伊豆半島東岸,伊豆大島西岸沖などの123地点から48科,289種と44未確定種の多毛類が確認された.このうち次の4種,Heteropelogenia japonica,Sigalion shimodaensis,Sigalion tanseimaruae,Eunice unibranchiataは新種である.また,18種,Labioleanira yhleni,Labiosthenolepis sibogae (Sigalionidae),Glycera brevicirris (Glyceridae),Marphysa bellii,Marphysa kinbergi,Marphysa mortenseni (Eunicidae),Scoloplos (Leodamas) rubra (Orbiniidae),Caulleriella hamata (Cirratulidae), Pherusa papillata (Flabelligeridae),Mediomastus californiensis,Notomastus hemipodus (Capitellidae),Phalacrostemma elegans (Sabellariidae),Amage arieticornuta,Melinna oculata,Sosane occidentalis (Ampharetidae),Pista agassizi (Terebellidae),Chone ecaudata,Megalomma vesiculosum (Sabellidae)は日本から初めて記録された.44未確定種はいずれも個体が不完全か幼体で種名まで明らかにできなかったが,これらを加えると本調査で300種以上の多毛類が出現したことになる.諸般の事情により相模湾と相模灘の中央部での調査が実施されなかったが,今後,この海域の水深1000〜2000mで集中的な調査が行われると,更に多毛類の種数が増加し,新知見が得られるであろう.研究された標本は,つくば市の独立行政法人国立科学博物館筑波研究資料センター昭和記念筑波研究資料館に保存される.
- 2006-03-27
著者
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今島 実
国立科学博物館動物研究部
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今島 実/武田
国立科学博物館動物研究部/国立科学博物館動物研究部/国立科学博物館動物研究部/国立科学博物館植物研究部/国立科学博物館植物研究部/国立科学博物館地学研究部/国立科学博物館地学研究部/国立科学博物館地学
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今島 実
国立科学博物館地学研究部
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今島 実
国立科学博物館
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