伊豆諸島の新島と大島周辺海域から得られたカンザシゴカイ類(多毛環虫類)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
伊豆・マリアナ弧諸島の自然史科学的総合研究の第2年目として, 1977年7月に伊豆諸島のうちの新島と大島の周辺海域で海産無脊椎動物相の調査を行った。両島での磯採集ならびにドレッヂによる採集の結果, 多くの種類が得られたが, そのうちで多毛環虫類のカンザシゴカイ科 (Serpulidae) の種類が研究された。両島から得られた11属, 25種には5新種, Pseudovermilia pacifica, Semivermilia elliptica, Metavermilia ovata, Metavermilia truncata, Metavermilia gravitesta, 3日本新記録種, Serpula cf. kaempferi , Hydroides dirampha, Placostegus tridentatus が含まれる。そして Pseudovermilia, Semivermilia, Placostegus の3属は現在まで日本で報告されていなかった。報告された25種のうち, Serpula cf.kaempferi, Hydroides tuberculata, Hydroides albiceps, Pomatoleios krausii, Spirobranchus latiscapus, Spirobranchus giganteus corniculatus, Metavermilia acanthophora の7種がインド・太平洋域に広く分布しており, Hydroides dirampha, Spirobranchus cf. polytrema, Vermiliopsis lablata, Vermiliopsis infundibulum/glandigera-group, Placostegus tridentatus, Ditrupa arietina の6種が地中海, 大西洋を含む広い海域に分布している。そして, Hydroides fusca, Hydroides fusicola, Hydroides multispinosa, Hydroides ezoensis, Metavermilia spicata, Metavermilia inflata, Protula tubularia caeca の6種と1亜種, それに5新種を合せた合計12種が現在のところ日本固有種であり, これは全種数のほぼ1/2にあたる。既知の7日本固有種は北方海域に主たる分布をもつHydroides ezoensis を除いて, いずれも九州以南や小笠原諸島の南方海域から採集されている。新しく記載された新種は島嶼によるための種分化の結果両島のみに限って分布しているものか, あるいは黒潮海域の他の場所にも分布しているものかは今後の該当海域における調査にまたねばならない。
著者
関連論文
- 相模湾と相模灘産多毛環虫類
- チスイビル Hirudo nipponia Whitman の眼寄生例
- トラック諸島,ポナペ島,マジュロ環礁と他のインド・太平洋域のカンザシゴカイ類(多毛類)(北赤道海流域における海産動物相調査報告 : II.1982年6〜8月の調査によるトラック請島,ポナペ島とマジュロ環礁のサンゴ礁動物相の研究)
- 17 チスイビルの眼寄生例
- Fauvelによつて報告された三崎及び瀬戸産シリス類(多毛類)の再検討
- 北陸・山陰地域の自然史科学的総合研究
- 1. 学会の50年間を振り返って(日本動物分類学会第36回大会講演抄録)
- 日本動物分類学会発足50周年記念特別寄稿 : 日本動物分類学会年譜
- 厚岸湾の多毛環虫類
- 猿払海域の多毛環虫類
- ドレッヂにより得られた大島海峡と焼内湾(奄美大島)のスピオ科の多毛類
- 石狩湾の多毛環虫類
- ナウール,ギルバートおよびソロモン両諸島から採集されたカンザシゴカイ類(多毛類)(北赤道海流域における海産動物相調査報告III.1984年7〜9月の調査によるナウール,ギルバート諸島およびソロモン諸島のサンゴ礁動物相の研究)
- 皇居の貧毛類
- 伊豆半島下田周辺の多毛類
- 伊豆諸島の新島と大島周辺海域から得られたカンザシゴカイ類(多毛環虫類)
- 付着生物中にみられる多毛類の季節的消長
- 男鹿半島周辺海域のカンザシゴカイ類(多毛綱)の種類と分布
- 紀伊半島の潮岬周辺海域から得られたカンザシゴカイ類(多毛環虫類)
- 宮古湾内の多毛環虫類相
- 多毛類によるトコブシ殻穿孔--主にPolydora属の種類について
- 対馬周辺海域から採集された遊在性多毛類
- オホ-ツク海沿岸,特に網走海域のホタテガイにおける穿孔性多毛環虫Polydora属の侵蝕状況
- 北海道東部の自然史科学的総合研究実施の目的と平成4年度調査研究の成果
- パラオ諸島とヤップ諸島から得られたカンザシゴカイ類(多毛類)(北赤道海流域における海産動物相の調査報告 : I.1980年6〜7月の調査によるパラオとヤップ諸島のサンゴ礁動物相の研究)
- コロール島の「パラオ熱帯生物研究所」跡に立って
- 小笠原諸島の父島周辺海域から得られたカンザシゴカイ類(多毛類)
- 種子島周辺海域のカンザシゴカイ類
- 様似沖刺網漁場周辺における底生性多毛類の生物量
- 淡水産多毛環虫類について
- 九十九湾とその周辺の遊行多毛類(予報)
- 相模灘から得られたPogonophora数種(予報)
- 本邦産シリス科Autolytus属の種間における器官の比較(分類・形態)