ドレッヂにより得られた大島海峡と焼内湾(奄美大島)のスピオ科の多毛類
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概要
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国立科学博物館の「日本列島の自然史科学的総合研究」の一環として, 1989年7月に奄美大島の大島海峡と焼内湾でドレッヂによる多毛類の調査を行った。多数個体の多毛類が得られたが, スピオ科(Spionidae)の種類が研究された。スピオ科の種類のなかには有用貝の貝殻中に穿孔して遂には貝を殺してしまうものや, 海洋汚染の指標種になっているものもあって, 注目されている科である。本調査でスピオ科は9種と未確定種4種が見出された。現在までに奄美大島からスピオ科の種類はPrionospio (Prionospio) ehlersiのみが報告されていたが, この研究で8種が追加され, それらのなかに1新種Prionospio (Prionospio) oshimensisと1日本新記録種Prionospio (Prionospio) tridentataが含まれている。有用貝殻中に穿孔して有害虫とされるPolydora-groupの種はドレッヂにより試料からは見出されなかつた。大島海峡は奄美大島と加計呂麻島との間の海峡で水通しが良いのに対し, 焼内湾は奄美大島の西側に約12 kmにわたって深く入り込み, 湾奥には川内川, その他の川からの陸水が流入している。大島海峡と焼内湾から見出された種類を比較すると次のようになる。両海域に見られる種はPrionospio (Prionospio) ehlersi, P.(P.) depauperata. Scolelepis sp., 大島海峡のみから見出される種はAonides oxycephala, Prionospio (Aquilaspio) sexoculata, P.(Prionospio) tridentata, P.(P.) dubia, P. (P.) oshimensis, Laonice sp., Spiophanes sp., 焼内湾からのみ見出される種はPrionospio (Minuspio) elegantula, P.(M.) elongata, Paraprionospio sp.であった。Paraprionospio sp., は焼内湾奥のSts. 15,16からのみ見出され, 水質を良く反映している。
- 国立科学博物館の論文
著者
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今島 実
国立科学博物館動物研究部
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今島 実/武田
国立科学博物館動物研究部/国立科学博物館動物研究部/国立科学博物館動物研究部/国立科学博物館植物研究部/国立科学博物館植物研究部/国立科学博物館地学研究部/国立科学博物館地学研究部/国立科学博物館地学
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今島 実
国立科学博物館地学研究部
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今島 実
国立科学博物館
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