海水活性汚泥法における環境制限因子としての界面活性剤の使用について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
海水活性汚泥で焼酎蒸溜廃液の処理中, Hypotrichaeを中心とする原生動物類が大量に増殖してフロックを蚕食し, このためフロックの痩削や破壊がおきて, これが海水活性汚泥の沈降性の悪化の一因であった.この際, 大量に発生している原生動物類を適当な界面活性剤を環境制限因子として使用して駆除することによって海水活性汚泥による焼酎蒸溜廃液を順調に行うことを目的とした.1.分析の結果, 今回使用した米麹甘藷仕込焼酎と米麹米仕込焼酎の蒸溜廃液のCOD(化学的酸素要求量)は約23,000ppmであった.また, COD : 全窒素 : リン比はそれぞれ100 : 10 : 0.6〜0.8および100 : 11 : 1.3でいずれリンが適正範囲より少ない.2.界面活性剤の流下の流下条件を決定するため細菌の生育・呼吸および海水活性汚泥の呼吸に及ぼす界面活性剤の影響を検討した.細菌の生育についてはカチオン系界面活性剤の生育阻害作用が著しく, 10ppmでも被検細菌64株の半数で生育が認められなかった.一方, 細菌および海水活性汚泥の呼吸については, カチオン系界面活性剤のカチオンG-50(ドデシル・ジメチル・ベンジル・アンモニウム・クロリド)やCTAC(セチル・トリメチル・アンモニウム・クロリド)は25ppm前後の濃度でも呼吸に著しく影響することが明らかになった.3.米麹甘藷仕込焼酎蒸溜廃液の連続処理条件を検討したが, 水量負荷は0.49〜1.70m^3/m^3/dayおよびCOD負荷量は0.10〜0.51kg/m^3/dayの範囲内で良好であった.4.界面活性剤10ppmを流下しながら焼酎蒸溜廃液の連続処理を行った。カチオンG-503日間の流下程度なら, 原生動物類, とくにHypotrichaeはほとんど消失してしまうが, 海水活性汚泥細菌相には劇的な影響はなく, 活性汚泥の処理能もほぼ良好なあった.一方, アニオン系のLAS(直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム)ではHypotrichaeは除去できなかった.米麹甘藷仕込焼酎の蒸溜廃液の連続処理でカチオンG-50流下によって微生物相におきた変化をみると, 細菌相にもその重心の変化のあったことがわかった.とくに主要な相構成細菌のAlcaligenesがいちはやく消失してしまった.以上の結果, 界面活性剤で原生動物類を制御し, 海水活性汚泥の沈降性を良好な状態にまで回復させることが可能であると判断できた.
- 鹿児島大学の論文
- 1986-03-15
著者
関連論文
- 海水活性汚泥の微生物相, とくに従来法による常在微生物相について
- 微細藻バイオマスから凝集沈殿法によって活性汚泥をつくる試み : III.活性フロックの微細藻フロラ
- 微細藻類からの澱粉粒の回収について
- 藻類の粗繊維分画の利用について
- 高酸度焼酎醪における乳酸菌の螢光抗体法による検出について
- 活性汚泥法処理水およびメタン発酵脱離液中のビタミンB_の定量について
- 旧式焼酎の高酸度醪のモデル実験について
- 旧式焼酎酒母・醪から分離した乳酸菌の生態学的性質について
- 旧式焼酎(米麹生白糠仕込)醸造における酒母・醪中の乳酸菌について
- 甘藷焼酎醸造における酒母, 醪中の乳酸菌について
- 海水活性汚泥法における環境制限因子としての界面活性剤の使用について
- 旧式焼酎(米麹米/生白糠仕込)蒸溜廃液の海水活性汚泥による連続処理
- 209 海水活性汚泥による旧式焼酎蒸溜廃液の連続処理
- 微細藻バイオマスから凝集沈殿法によって活性汚泥をつくる試み : IV.活性フロック中の原生動物について
- 各種処理条件下におかれた海水活性汚泥の処理能と微生物相について
- 海水活性汚泥中, 微生物の局在性の検討
- 海水活性汚泥の微生物相, とくにフロックの構造性について
- 温度的性質を標的とする焼酎こうぼの改良 : I.焼酎こうぼおよびタプイこうぼのプロトプラスト形成について
- 旧式焼酎醸造過程におけるジアセチルの生成について
- 海水活性汚泥の嫌気処理について
- 猿酒について