甘藷焼酎醸造における酒母, 醪中の乳酸菌について
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概要
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焼酎醸造の微生物管理上乳酸菌が重要な関係をもつものと考えられるので, 鹿児島県内30の醸造場の米麹甘藷仕込焼酎の酒母・醪中の乳酸菌分布とそれら分離乳酸菌の酒母・醪の生態学的要因との関係を検討した.分離乳酸菌43株の同定の結果, ホモ型ではL乳酸生成のLactobacillus casei 11株, L.xylosus 2株, L.sake 8株, DL乳酸生成のL.acidophilus 6株, またへテロ型ではL.brevis 14株, L.fermentum 2株であった.これら乳酸菌の分布をみると酒母では乳酸菌の検出は27試料中6点, とくにL.caseiが認められないのが特徴的であった.ところが, 醪では30試料中28点から乳酸菌が分離され, L.caseiは11点, L.adidophilusは11点, L.sakeは15点, L.brevisは8点とそれぞれ出現している.このことは酒母・醪の生態学的要因, すなわち, クエン酸やアルコールの存在に対する乳酸菌の対応が関係しているものと思われる.乳酸菌のクエン酸耐性をみると菌株によりばらつきはあるが, 酒母のクエン酸濃度である0.91%では耐性の高いものでも生育は完全にストップする.一方, 醪のクエン酸濃度である0.15%附近では多くの乳酸菌の生育はほとんど影響を受けなかった.また, アルコール耐性についても, アルコール12〜15%で生育が完全に認められなくなった.このことは醪で物料を掛けた時に一時的にアルコールが10%以下となると同時にクエン酸濃度は0.15%と低くなれば乳酸菌の増殖する余地が出来るものと思われ, 醸造場の乳酸菌分布をこのことはよく説明している.
- 1982-03-19
著者
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田邊 幾之助
応用微生物学研究室
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音地 龍夫
応用微生物学研究室
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二石 真智子
応用微生物学研究室
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迫間 敬子
応用微生物学研究室
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志々目 義紀
鹿児島県酒造組合連合会
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志々目 義紀
中央酒類株式曾社鹿児兒島工場研究室
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田邊 幾之助
鹿大, 農
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