ウズラの血清蛋白における雌雄間差異
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概要
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ウズラの血清蛋白質について, その雌雄差や成育段階による差異, さらに去勢ならびに性ホルモンの投与などによる影響を知る目的で, 主としてディスク電気泳動法を用いて解析を行なった.その結果の大要は次のとおりである.1)先ず蛋白染色(アミドブラック10B)による泳動像についてのべると, 幼若ウズラにおいては陽極側に9本(A〜I)の泳動像が分離検出されたが, 雌雄による差異は認められなかった.2)成熟ウズラについては, 雌雄差や成育段階による差異が顕著に認められた.すなわち, 成熟雄においては幼若期の場合とほぼ同じ泳動像が観察されたが, 成熟雌では幼若期や成熟期の雄個体に比してBバンドとCバンドが強く現われるのに対し, Fバンドは著るしく濃度が弱くなることが明らかとなった.さらに成熟雌個体においては, 移動度の一番高いJバンドがあらたに発現することが確かめられた.3)35日齢での雌雄各個体の去勢による血清蛋白泳動像の変化をしらべた結果, 雄個体では, Fバンドをのぞいて他のバンドは去勢による大きな影響は認められなかった.雄去勢区のFバンドは, 無処理の正常雄個体に比してその濃度が幾分薄い傾向が認められた.一方, 雌個体では去勢後の日齢が進んでも成熟雌タイプの泳動像は現われず, 去勢雄個体と同じ泳動像が認められた.4)無産卵ウズラ(100日齢に達しても産卵しないもの)では, 成熟雌タイプの泳動像は現われず, 逆に成熟雄タイプの泳動像が観察された.5)性ホルモンの投与による血清蛋白泳動像の変化を観察した結果, 成熟雄個体に雌性ホルモン(diethylstilboestrol)を投与すると雄固有のFバンドは濃度が薄くなり, 新たに成熟雌タイプのBバンド, CバンドとJバンドとが発現した.他方, 成熟雌個体に雄性ホルモン(testosterone propionate)を投与すると従来の成熟雌タイプのBバンド, CバンドとJバンドは消失し, 反対にFバンドが強い濃度で現われた.雌雄各去勢区への性ホルモン投与についても同様の結果が得られた.6)オイルレッドOによる脂質染色を行なって蛋白染色区と比較した結果, 上記のB, C, FおよびJバンドのうちB, CとFバンドはリポ蛋白であることが明らかとなった.リポ蛋白はB, C, Fバンド以外にも2本が観察された.7)以上の実験結果から電気泳動的に検出された多くの血清蛋白泳動像のうちB, C, FおよびJバンドは雌の産卵生理と深い関連性を有し, 性ホルモン特に雌性ホルモンの完全な支配を受けていることが明らかとなった.
- 1968-02-15
著者
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岡本 悟
佐賀大学農学部
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橋口 勉
鹿児島大 農
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武富 萬治郎
家畜育種学研究室
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武富 萬治郎
Laboratory of Animal Breeding
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前田 芳実
Laboratory of Animal Breeding
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橋口 勉
Laboratory of Animal Breeding
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岡本 悟
Laboratory Of Animal Breeding
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