看護のアイデンティティー、その6 : 看護倫理に関する大学生と看護師の価値観の相違とその意味(保健福祉学部看護学科)

概要

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看護職のアイデンティティーを明確にして看護学生を教育することは、看護大学が充実した教育を行なうために重要な課題である。これにより学生は看護に対するアイデアを尽きること無く刺激され、また、卒業後も職業人として臨床の場で勇気づけられて義務の達成が容易なものとなるであろう。大学教育に役立てるため、我々はこれまでに看護のアイデンティティーに関するキーワードのうち、看護職の資質、個人的行動、看護職に重要な社会生活、看護技術の4つの範疇のキーワードについて看護師と学生の価値観の差について報告してきた。この報告では、第5範疇である看護倫理に関する44キーワードについて学生と看護師の価値観の差について報告する。相違を比較するのは、前の報告と同様、入学経緯や教育環境が類似である本学1年生と卒業生の看護師の2集団である。学生と看護師の回答に基づき、彼女らが最も大事と考える概念に10点を与え、2番目に大事と考える概念に9点を与え、順次点数を下げていくとういう操作を行い、1番から44番の各キーワードの得点を看護師と学生の2種類にデータベース化した。各キーワードの得点を看護師と学生の母数でそれぞれ除してこれを平均倫理指数と名付けた。さらに、学生から看護師に変化したときの価値観の変化を明白にするため、「看護師倫理指数」の「学生倫理指数」に対する比を求めた。この操作により、看護師になることにより重要性が高まり、かつ両者がある程度の高得点を与えたものとして、患者の感情や話を受け止める、専門知識を増す、ニーズの把握と正確な対応、自尊心(羞恥心)の尊重、個々の患者に合わせた対応、謙虚に患者に接する、などの語句が抽出された。患者の感情や話を受け止める、専門知識を増す、ニーズの把握と正確な対応、の各キーワードは看護師での得点が高くかつ学生との価値観の差も大きかった。一方、学生は、生命の尊重、患者の心に目を向ける、に看護師よりもかなり高い評価を与えていた。看護師がことに高い点を与えた、患者の立場にたつ、守秘する、患者の感情や話を受け止める、安心を与える(不安を無くする)、専門知識を増す、人権尊重または差別しない、などは看護教育の方法やカリキュラムに反映させるに適当な項目と考えられた。
西南女学院大学の論文
2006-02-28

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