日本の熱水噴出域および冷水湧出域に生息する軟体動物 : 過去20年間に記録された分類群の総括
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概要
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2004年までに日本の熱水噴出域および冷水湧出域から記録された軟体動物を総括し,リストを作成した。記録された74種(多板綱2種,二枚貝綱30種,腹足綱42種)のそれぞれについて,ホロタイプの所蔵先と登録番号,模式産地,地理的分布域・生息深度,生息環境を列挙した。他の環境・地域との比較により,日本の熱水噴出域および冷水湧出域に生息する軟体動物相には下記のような特徴があるといえる。(1)日本の周辺はシロウリガイ属の多様性が世界で最も高い海域である。(2)大型になる二枚貝類では,シンカイヒバリガイ属がその次に多様性が高い。(3)多くの種は熱水噴出域または冷水湧出域のどちらかに固有であるが,シロウリガイ属とシンカイヒバリガイ属には両者の環境に生息する種がある。(4)深海の軟体動物相を特徴づける原鰓亜綱はきわめて乏しく,異靭帯亜綱は全く記録されていない。(5)熱水噴出域または冷水湧出域に固有の笠型貝類の種が多い。(6)ネオンファルス科に分類されているカイコウケシッブシタダミを除き,ネオンファルス上科の種は分布していない。(7)新生腹足類ではハイカブリニナ属が多く,ハイカブリニナ科の大型種,アルビンガイ属(Alviniconcha)やヨモツヘグイニナ属(Ifremeria)は日本には分布していない。(8)タマガイ科の捕食者は化石記録では過去にシロウリガイ類を捕食していたことが知られているが,現生の群集では確認されていない。(9)新腹足目に属する肉食者の一部は,周囲の環境から一時的に化学合成群集に侵入する種である。(10)沖縄トラフから記載された多板綱2種は,熱水噴出域に生息する多板類の世界で唯一の記録である。(11)溝腹綱,尾腔綱,単板綱,掘足綱,頭足綱は海外の産地では報告例があるが,国内の産地からは発見されていない。
- 日本貝類学会の論文
- 2005-12-31
著者
-
奥谷 喬司
Japan Agency for Marine-Earth Science & Technology (JAMSTEC)
-
藤倉 克則
Japan Agency for Marine-Earth Science & Technology (JAMSTEC)
-
奥谷 喬司
Japan Agency For Marine-earth Science And Technology
-
佐々木 猛智
University Museum, University of Tokyo
-
藤倉 克則
海洋研究開発機構
-
奥谷 喬司
Japan Agency For Earth-marine Science & Technology (jamstec)
-
奥谷 喬司
海洋研究開発機構
-
奥谷 喬司
National Science Museum
-
奥谷 喬司
東京水産大学資源育成学科
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