「浄土庭園」の空間構成に関する考察 : 円成寺・浄瑠璃寺を事例として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
浄土庭園の語義規定に使用される「浄土の雰囲気を表わす」という表現は,抽象的あるいは主観的であり語義規定としては不適当であると考える.むしろ「仏堂」と「池」の物理的な位置関係あるいは庭園意匠の特徴による規定が望ましい.本論では他の浄土庭園の事例に比べて「仏堂と園池の視覚的な一体性」が希薄であると思われた円成寺と浄瑠璃寺を対称に,「仏堂」と「池」の位置関係を明確にするための基礎的な考察として,園池が造営された時点の空間構成を明らかにしようとした.円成寺では仏堂と園池の地盤高に落差があり,中間には楼門が建てられている.また楼門下と園池の境界部は早くから主要導線であった可能性が高い.このような円成寺の空間構成の成立は,伽藍の発展経緯に求められることを示した.さらにこの考察の過程で,円成寺の南北の橋については創建当時にはなかったか,あるいは仮設であった可能性のあることを指摘した.一方で仏堂と園池の視覚的な一体性は,地盤の高低差あるいは楼門の存在によって阻害されていると予想されたが,南岸からの視点が考慮されている可能性も否定されなかった.浄瑠璃寺では仏堂と池の配置バランスに偏りが見られる.この空間構成上の特徴を他の浄土庭園との比較によって示した.そして現在の園池が,九体阿弥陀堂とは別の阿弥陀堂である「西堂」に対して造られたものであって,九体阿弥陀堂に対してその調和を考慮して計画的に造営されたものではないという見解を示した.また「西堂」を想定した場合には仏堂と池の配置バランスが適当になると推測した.
- 千葉大学の論文
- 1998-03-31
著者
関連論文
- 「寝殿造庭園」と「浄土庭園」の比較研究 : 「法成寺」の庭園意匠の特徴に関する考察
- 日本庭園の歴史的展開にみる池庭から独立枯山水庭園への進展過程における常栄寺庭園の位置付に関する研究
- 浄土庭園に関する概念論とその定義
- わが国における庭園学教育の発祥に関する研究
- 作庭のための境界論序説(その1) : 戸定が丘歴史公園を事例として
- 緑地設計の選択条件に関する考察 : 「21世紀の森と広場」を事例として
- 平安時代における浄土庭園の進展に関する研究 : 無量光院庭園の役割
- 庭園の人為性と自然性に着目した視覚反応実験による「美しさ」に関する評価の構造 : 池泉廻遊式庭園をケーススタディとした分析
- 都市環境における彫刻作品の量と住民の意識の関係
- 都市環境における芸術の導入手法.III : 公共彫刻の評価の基本的構造について
- 伝統的庭園の空間構成に関する研究(I) : 『作庭記』における流路を中心に
- 「浄土庭園」の空間構成に関する考察 : 法成寺及び平等院を事例として
- 「浄土庭園」の空間構成に関する考察 : 円成寺・浄瑠璃寺を事例として
- 住宅緑地における住民意識の類型化による構造とその関連性について : 中国・北京市八角中里住宅団地翠園を事例として
- 永保寺庭園における庭園様式に関する研究
- 西芳寺庭園における庭園様式に関する研究
- 緑地デザインにおける思考プロセスに関する研究(その2) : 曲池勝春園におけるケーススタディ
- 緑地デザインにおける思考プロセスに関する研究(その1) : フォルムの分解
- 地域資源の保全と開発に関する研究(II) : 山村地域における地域資源の構造と分類による特性比較
- 中国写意山水園論
- 地域資源の保全と開発に関する研究(I) : 地域開発研究の歴史的展開過程
- 江戸期の庭園の復元に関する基礎的研究(第1報) : 幕末の大名屋敷の庭園について
- 東京の池泉庭園の変遷に関する研究 : 水源の変化を対象として