日本庭園の歴史的展開にみる池庭から独立枯山水庭園への進展過程における常栄寺庭園の位置付に関する研究
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概要
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本論文の目的は日本庭園の歴史的展開にみる池庭から独立の枯山水庭園への進展過程に関する常栄寺庭園の位置付を明らかにすることである,しかし,常栄寺庭園を明確に位置付けることは,極めて大変困難である.なぜなら,常栄寺庭園の具体的な作庭年代と作者が不明であるからである.雪舟は,一般的に庭園デザイナーとされているが,かれが常栄寺庭園を作った記録あるいは,その他の明確な証拠が未だに存在しないことは事実である.それにしても,常栄寺庭園には大変興味深いところがあり,池庭部と枯山水部が同時に存在している.その独特の地割のため,日本庭園発展史上の観点から見れば,常栄寺庭園は独立の枯山水庭園が出現する前に作られたと思われる.しかし,芬陀院庭園と竜安寺庭園(両庭園ともに作庭年代や作者が不明)とを比較した場合,大内家辞書,君台観左右帳記,臥雲日件録,蔭涼軒日録,碧山日録等の記録によれば,芬陀院の独立枯山水庭園が明らかに常栄寺庭園や竜安寺庭園の作庭以前に作られたことが分かった.独立の枯山水庭園(芬陀院庭園,1446年以前)が池庭と同時に存在する枯山水部(常栄寺庭園,1460以降)の以前に作られたことは矛盾に見えるかもしれないが,室町時代には新たに京都が日本の文化的中心となったため,独立の枯山水庭園への進展と普及は京都の方が地方より早かったと考えられる.
- 1998-03-31
著者
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