「寝殿造庭園」と「浄土庭園」の比較研究 : 「法成寺」の庭園意匠の特徴に関する考察
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概要
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寝殿造庭園が自然の再現を試みたものであるとし,浄土庭園が浄土景観の創造を目的として造られたものであるとするならば,その目的の相違がそれぞれの庭園景観に何らかの影響を及ぼしていることが考えられるであろう.また,藤原道長によって造営された「法成寺」や,道長の子,藤原頼通によって造営された「平等院」では,庭園内に作り物の樹木や花・鳥の飾り物などの,いわゆる人工装飾物が配置されたことが知られている.このことは前述の『作庭記』から読み取ることのできる,寝殿造庭園の作庭の主旨には相反する行為ではないかと考える.従って,「法成寺」や「平等院」の庭園には,その庭園景観において寝殿造庭園との違いがあったと推測する.そこで,本稿では,古典文学に登場する庭園を対象として,浄土庭園と寝殿造庭園の庭園景観の相違を,庭園の構成要素,及びそれらが構成する庭園意匠から受ける印象を分析することによって,明らかにすることを試みた.さらに「法成寺」の庭園を事例として,人工的な装飾物が庭園景観に及ぼした影響について考察した結果,1当時の貴族が持っていた浄土のイメージに自然的な要素が見られないこと[第2章],2文学作品の中でも人工的なモチーフに浄土のイメージを抱く傾向が見られたこと[第3章],3地中や池の周囲にかなりの数量の人工的装飾物を設置する必要があったらしいこと[第4章],の理由から,「法成寺」の庭園景観は寝殿造庭園の景観[第2章参照]とは相違が認められると推察した[第5章].具体的には,建物前の池の周囲には人工的装飾物を設置するためのかなり広い空間が確保され,そこにはいわゆる『作庭記』的な,自然的モチーフによる自然景観を表現するといった手法は用いられなっかたものと推測するに至った.
- 1997-03-28
著者
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