西芳寺庭園における庭園様式に関する研究
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概要
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本研究の目的は,京都にある西芳寺庭園の様式を,現地調査と古文献の分析により,解明しようとするものである.西芳寺は,禅宗の寺院として知られ,その寺院に附属する庭園も禅宗庭園と呼ばれている.しかし,国師年譜,蔭涼軒日録,西芳寺縁起などの古記録が示すように,旧西方寺庭園が元来平安時代に,そして浄土教の強い影響で造られたものである.当時,池が掘られ,阿弥陀堂が造られているから,庭園の様式からみて浄土庭園として観察する必要がある.西芳寺庭園が14世紀の前半に,夢窓国師により造られたと一般的にされているが,古文献によりその説を裏づけるに足る明確な論拠がないかぎり,やはり,夢窓国師がその庭園に手を加えていないという可能性の方が高い.もし夢窓国師が実際に西芳寺庭園を改造したとしても,それに関する記録が無いので,その改造工事が大規模だったとは考えにくい.西芳寺庭園の地割は,藤原師貞が平安時代末期に寺院と庭園を再建した時からあると考えられる.その考えによれば,西芳寺庭園は室町時代や南北朝時代の文化財というよりも平安時代の重要な文化財といえよう.西芳寺庭園を手法的に,古文献に禅宗庭園の記録が明示されていない故に,禅宗庭園として解説するのが困難である.現存している西芳寺庭園でも,平安時代末期の浄土庭園の様式,すなわち宝池,地割などを,観察することができる.本庭園の様式は,夢窓国師がその庭園を作り直したという主張がはっきり証明できないかぎり,禅宗庭園という様式より,旧浄土庭園という様式名をつけた方が確実,適切なのである.
- 千葉大学の論文
- 1997-03-28
著者
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